2006年10月

2006年10月22日

 サウジアラビアは1992年に公布された「統治基本法」により、政体はサウド家による君主制とし、国王はアブドルアジズ初代国王の子息および孫(男子)とされ、また、国王が皇太子の選任と解任を行う、と規定されている。そして2000年5月には、後継者問題を含むサウド家一族の問題を扱う「王室評議会」が設置されている。
 但し王室評議会は一族の合議機関であり、後継者選定の具体的な手続きや内容は明らかにされていない。昨年8月に第五代ファハド国王が亡くなった時、新国王は当時病弱の国王に代わり皇太子として実権を把握していたアブダッラーが第6代国王に即位し、アブダッラーは第二副首相のスルタン国防相を皇太子に指名した(スルタンは同時に第一副首相に就任したが、サウジアラビアでは国王が首相を兼務し、皇太子が第一副首相を務めることが慣例となっている)。新しい国王及び皇太子二人はいずれも初代国王の子息(異母兄弟)であり、現存する子息の最年長者であったため、世間からは順当な王位継承である、とみなされた。
 この王位継承に際しては、次の後継者、つまり次期皇太子として引き続き異母兄弟(最有力候補としてサルマンリヤド州知事の名が挙げられた)になるのか、それとも次世代(即ち初代国王の孫の世代)のいずれになるかが話題となった。スルタンが皇太子に指名された例に従い、第二副首相が任命されれば、その人物が次期皇太子になるものと考えられ、その帰趨に注目が集まったが、結局第二副首相は指名されないまま今日に至っている。
 現国王、皇太子はともに高齢であり(国王82歳、皇太子76歳)近い将来交替することは誰の目にも明らかである。継承手続法は、このような状況を踏まえて制定されたものである。これによって差し当たっての懸案である、次期皇太子の選任手続きを透明性のあるものとし、ひいてはサウド家の支配体制の継続を内外にアピールすることが、今回の法律制定の目的であると考えられる。

 以下は告示された新法(英文名「New succession law」)の概要である。

・ 次期の国王、皇太子を選任するため、年配の王子で初代国王の子息及び孫から成る委員会(The Allegiance Commission, 忠誠委員会)を設置する。
(注、委員の人数或いはメンバーについては告示では明らかにされていないが、国王及び皇太子の子息を含む。なお事務局長にはKhaled ibn Abdul Aziz Al-Tuwaijeriが指名された)
・ 委員会は、国王が指名する皇太子について意見を述べることができる。
・ 皇太子は新国王の即位後、30日以内に指名される。
・ また3人の医師から成る5人のメンバーによるmedical committeeを設置する。
・ 国王が病気その他の理由により執務困難な状態になったときは、Medical Committeeは、国王の健康状態のレポートを忠誠委員会に提出する。
・ 忠誠委員会が国王の執務不能と認定した時は、皇太子が国王に代わって国政を執る。
・ もし国王及び皇太子が同日に亡くなった場合は、忠誠委員会が初代国王の息子または孫から最適任者を選任する。
・ 新国王は即位後、1乃至3名の皇太子候補者を忠誠委員会に提出し、委員会はその中から最適任者を皇太子に選定する。選定は委員会の全会一致とする。
・ もし忠誠委員会が全会一致でない場合は、国王による皇太子候補者リスト或いは委員会独自の候補者リストに基づき委員の投票により皇太子を決定する。
・ 委員会は全員出席を原則とし、委員長の許可が無い限り審議中の途中退席は認めない。

以上

サウド家家系図」参照

なお、サウド家については以下のHPがあります。
・MENA Informant「サウジアラビア・サウド家の構図(改訂版)


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