2009年03月
2009年03月21日
各項目をクリックすれば各紙(英語版)にリンクします。
(クウェイト)KNPCが製油所契約の破棄を日揮等に正式通告、理由は示さず。
(ドバイ)電力公社の22億ドル借り換え、イスラム金融イジャーラ方式で推進
(UAE)首相府の公式ホームページ開設
(クウェイト)KNPCが製油所契約の破棄を日揮等に正式通告、理由は示さず。
(ドバイ)電力公社の22億ドル借り換え、イスラム金融イジャーラ方式で推進
(UAE)首相府の公式ホームページ開設
2009年03月20日
(注)図表入りで全体をまとめたものをホームページ「中東と石油ー世界のSWF」に一括掲載しております。
3.ファンドの成立年代による分布
UNCTADリストの中で最も古いSWFは1922年に設立されたオランダのStichting Pensioenfonds ABPである。また1932年にはカリフォルニア州年金基金が生まれており、この二つのファンドが第二次大戦以前に設立されたSWFである。その後1953年にクウェイトが「ロンドン投資事務所」(KIO、後のクウェイト投資庁、KIA)を設立、このほか米国のニューメキシコ州及びカナダの年金ファンドなど第一次オイルショック(1973年)以前に5つのファンドが生まれている。
第一次オイルショック以降1999年までは、オイルマネーを蓄積したUAE、リビア、ノルウェー、イランなどの産油国が相次いでSWFを設立、また輸出の拡大により外貨準備を積み上げた中国やシンガポールなど合わせて26のSWFが生まれている。そして2000年以降、天然資源価格の高騰により、従来のUAE、クウェイトに加えロシア、カタール、ベネズエラなど石油・ガス生産国が新たなファンドを設立、また銅鉱石を輸出するチリのような非石油系の資源国もファンドを設立している。
2000年以降に設立されたSWFは35あり、ファンド数としては全体の2分の1を占めているが、1ファンドあたりの平均資産額は280億ドルであり、それ以前に設立されたSWFに比べて小粒である。
4.SWFの資金源別分布
SWFの資金源は、(1)石油・天然ガスなどの天然資源、(2)貿易或いは経常収支の黒字による外貨準備、(3)一般国民のための年金積立金、及び(4)(通常の民間ファンドと同じ)一般投資家からの出資金とそれを梃子(レバレッジ)とする金融機関からの借入金、の大きく四つの種類に分けることができる。
天然資源を原資とするSWFはアブダビのADIAのような産油国のSWFが代表格であるが、チリの銅、ボツワナのダイヤモンドなど石油・ガス以外の天然資源を原資とするものもある。一方、貿易収支の黒字による外貨準備を原資とするSWFを設立しているのは中国、シンガポールなどである。そしてカリフォルニア州年金基金のような年金積立金を運用するSWFがある。
これらの基金は資源収入、貿易黒字、年金等いずれも公的性格を帯びた資金(国富)を原資としている。これに対してDubai International Capital(DIC)などドバイのSWFの原資は周辺産油国の投資家の出資金と銀行借入によるものであり、通常の欧米のファンドと基本的には同じ性格のものである。SWFの「国富ファンド」と「政府系ファンド」という二面性のうち、後者のみの性格付けを持ったものと言えよう。
これら四つの資金源によってSWFの分布を見ると図3のようになる。石油・ガスを原資とするSWFは全体の56%(資産ベース)を占めている。これにその他の天然資源によるSWFを加えると、SWF全体の6割は天然資源による収入を原資としている。これに次ぐのが外貨準備を原資とするSWFで24%を占めており、また年金が原資のSWFは12%である。出資金・借入金を原資とするSWFは資産ベースでは全体の5%にとどまっている。
(完)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp
3.ファンドの成立年代による分布
UNCTADリストの中で最も古いSWFは1922年に設立されたオランダのStichting Pensioenfonds ABPである。また1932年にはカリフォルニア州年金基金が生まれており、この二つのファンドが第二次大戦以前に設立されたSWFである。その後1953年にクウェイトが「ロンドン投資事務所」(KIO、後のクウェイト投資庁、KIA)を設立、このほか米国のニューメキシコ州及びカナダの年金ファンドなど第一次オイルショック(1973年)以前に5つのファンドが生まれている。
第一次オイルショック以降1999年までは、オイルマネーを蓄積したUAE、リビア、ノルウェー、イランなどの産油国が相次いでSWFを設立、また輸出の拡大により外貨準備を積み上げた中国やシンガポールなど合わせて26のSWFが生まれている。そして2000年以降、天然資源価格の高騰により、従来のUAE、クウェイトに加えロシア、カタール、ベネズエラなど石油・ガス生産国が新たなファンドを設立、また銅鉱石を輸出するチリのような非石油系の資源国もファンドを設立している。
2000年以降に設立されたSWFは35あり、ファンド数としては全体の2分の1を占めているが、1ファンドあたりの平均資産額は280億ドルであり、それ以前に設立されたSWFに比べて小粒である。
4.SWFの資金源別分布
SWFの資金源は、(1)石油・天然ガスなどの天然資源、(2)貿易或いは経常収支の黒字による外貨準備、(3)一般国民のための年金積立金、及び(4)(通常の民間ファンドと同じ)一般投資家からの出資金とそれを梃子(レバレッジ)とする金融機関からの借入金、の大きく四つの種類に分けることができる。
天然資源を原資とするSWFはアブダビのADIAのような産油国のSWFが代表格であるが、チリの銅、ボツワナのダイヤモンドなど石油・ガス以外の天然資源を原資とするものもある。一方、貿易収支の黒字による外貨準備を原資とするSWFを設立しているのは中国、シンガポールなどである。そしてカリフォルニア州年金基金のような年金積立金を運用するSWFがある。
これらの基金は資源収入、貿易黒字、年金等いずれも公的性格を帯びた資金(国富)を原資としている。これに対してDubai International Capital(DIC)などドバイのSWFの原資は周辺産油国の投資家の出資金と銀行借入によるものであり、通常の欧米のファンドと基本的には同じ性格のものである。SWFの「国富ファンド」と「政府系ファンド」という二面性のうち、後者のみの性格付けを持ったものと言えよう。
これら四つの資金源によってSWFの分布を見ると図3のようになる。石油・ガスを原資とするSWFは全体の56%(資産ベース)を占めている。これにその他の天然資源によるSWFを加えると、SWF全体の6割は天然資源による収入を原資としている。これに次ぐのが外貨準備を原資とするSWFで24%を占めており、また年金が原資のSWFは12%である。出資金・借入金を原資とするSWFは資産ベースでは全体の5%にとどまっている。
(完)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp
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(クウェイト)ムーディーズが格付けを下方修正
(カタール)伝説の絨毯に550万ドルの値:サザビーが中東初の現地オークション
(サウジ)お祈り中のスピーカーの音量を低く:宗教省が通達
(クウェイト)ムーディーズが格付けを下方修正
(カタール)伝説の絨毯に550万ドルの値:サザビーが中東初の現地オークション
(サウジ)お祈り中のスピーカーの音量を低く:宗教省が通達
2009年03月18日
(注)図表入りで全体をまとめたものをホームページ「中東と石油ー世界のSWF」に一括掲載しております。
日本で「政府系ファンド」または「国富ファンド」と呼ばれるSovereign Wealth Fund(以下SWF)に関しては世界の研究機関やシンクタンクで多くのレポートが発表されている。SWFの定義そのものが統一されていないため、レポートによってその内容はまちまちであり、またSWF自身が情報公開に熱心でないため、資産総額などデータについてもばらつきが見られる。
本稿は、UNCTAD(国連貿易開発会議)が発表したWorld Investment Report 2008(WIR2008)の中の’FDI by sovereign wealth funds’の付表’List of major sovereign wealth funds, 2007’(以下「UNCTADリスト」)により、SWFの概要を解説しようとするものである。
(注)UNCTADのWIRは外国直接投資(Foreign Direct Investment, FDI)について、世界各国の対外投資額あるいは外国からの投資受入額及びそれぞれの投資残高を分析したものである。WIR2008のうちMENA諸国の状況については「A09 MENA何でもランキングシリーズ(4) MENA22カ国の直接投資2008年版」として解説したのでそちらを参照願いたい。
1.世界全体のSWFの規模について
UNCTADリストは世界のSWFの運用資産規模を総額5兆ドル(2007年末)と推定している。リストアップされたSWFは44カ国にまたがり、その運用資産合計額は4.8兆ドルであることから本リストは世界のほぼ全てのSWFを網羅しているとみられる。
最大のSWFはAbu Dhabi Investment Authority(ADIA, アブダビ投資庁)である。ADIAの運用資産は5,000乃至8,750億ドルと推定され、その推定額には大きな幅がある。しかしこの額はADIAに続く第2位のSWF、ノルウェーのGovernment Pension Fund-Global(GPF-G, 政府年金ファンド)の3,730億ドルの2倍以上であり、飛びぬけて大きなSWFであることがわかる。
3位にシンガポールのGIC(Government of Singapore Investment Corporation)、4位サウジアラビアのSAMA(Saudi Arabia Monetary Agency、但しSAMAは日本銀行に相当する中央通貨庁であり独立組織としてのSWFではない)、5位はオランダの(Stichting Pensioenfonds ABP)、6位中国のSAFE(State Administration of Foreign Exchange)と続き、これら6位までが推定資産規模3千億ドル以上のSFWである。
7位以下のクウェイト投資庁(KIA)、米国カリフォルニア州年金基金、中国投資公司(CIC)までが資産規模2千億ドルを超えている。その他資産規模が1千億ドル~2千億ドルのSWFにはシンガポールのTEMASEK、ロシアの石油・天然ガス基金(OGF)など5つのファンドがある。
資産規模3千億ドル以上のSWFは6ファンドであり、ファンド数としては全68ファンドの1割以下であるが、合計資産額は2.5兆ドルを超えており金額的には全体の5割以上を占めている。また資産規模1千億ドル以上の15ファンドの合計額は全体の7割弱に達している。
2.SWFの地域別・国別分布
SWFを地域別分布で見ると、アジア・大洋州及び中東がそれぞれ20ファンド、19ファンドと多く、この2地域で全68ファンドの6割を占めている。それ以外の地域ではアフリカ10、北米8、中南米6、欧州5となっている。
次にSWFの資産規模を国別に見ると、もっとも大きいのがUAEであり、同国のSWFの合計資産規模は1兆ドルに達し世界全体の2割を占めている。次に資産規模が大きい国は中国(6,200億ドル)、シンガポール(4,900億ドル)、ノルウェー(3,700億ドル)と続き、これら上位4カ国で世界全体のSWF資産の半分に達する。
(続く)
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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp
日本で「政府系ファンド」または「国富ファンド」と呼ばれるSovereign Wealth Fund(以下SWF)に関しては世界の研究機関やシンクタンクで多くのレポートが発表されている。SWFの定義そのものが統一されていないため、レポートによってその内容はまちまちであり、またSWF自身が情報公開に熱心でないため、資産総額などデータについてもばらつきが見られる。
本稿は、UNCTAD(国連貿易開発会議)が発表したWorld Investment Report 2008(WIR2008)の中の’FDI by sovereign wealth funds’の付表’List of major sovereign wealth funds, 2007’(以下「UNCTADリスト」)により、SWFの概要を解説しようとするものである。
(注)UNCTADのWIRは外国直接投資(Foreign Direct Investment, FDI)について、世界各国の対外投資額あるいは外国からの投資受入額及びそれぞれの投資残高を分析したものである。WIR2008のうちMENA諸国の状況については「A09 MENA何でもランキングシリーズ(4) MENA22カ国の直接投資2008年版」として解説したのでそちらを参照願いたい。
1.世界全体のSWFの規模について
UNCTADリストは世界のSWFの運用資産規模を総額5兆ドル(2007年末)と推定している。リストアップされたSWFは44カ国にまたがり、その運用資産合計額は4.8兆ドルであることから本リストは世界のほぼ全てのSWFを網羅しているとみられる。
最大のSWFはAbu Dhabi Investment Authority(ADIA, アブダビ投資庁)である。ADIAの運用資産は5,000乃至8,750億ドルと推定され、その推定額には大きな幅がある。しかしこの額はADIAに続く第2位のSWF、ノルウェーのGovernment Pension Fund-Global(GPF-G, 政府年金ファンド)の3,730億ドルの2倍以上であり、飛びぬけて大きなSWFであることがわかる。
3位にシンガポールのGIC(Government of Singapore Investment Corporation)、4位サウジアラビアのSAMA(Saudi Arabia Monetary Agency、但しSAMAは日本銀行に相当する中央通貨庁であり独立組織としてのSWFではない)、5位はオランダの(Stichting Pensioenfonds ABP)、6位中国のSAFE(State Administration of Foreign Exchange)と続き、これら6位までが推定資産規模3千億ドル以上のSFWである。
7位以下のクウェイト投資庁(KIA)、米国カリフォルニア州年金基金、中国投資公司(CIC)までが資産規模2千億ドルを超えている。その他資産規模が1千億ドル~2千億ドルのSWFにはシンガポールのTEMASEK、ロシアの石油・天然ガス基金(OGF)など5つのファンドがある。
資産規模3千億ドル以上のSWFは6ファンドであり、ファンド数としては全68ファンドの1割以下であるが、合計資産額は2.5兆ドルを超えており金額的には全体の5割以上を占めている。また資産規模1千億ドル以上の15ファンドの合計額は全体の7割弱に達している。
2.SWFの地域別・国別分布
SWFを地域別分布で見ると、アジア・大洋州及び中東がそれぞれ20ファンド、19ファンドと多く、この2地域で全68ファンドの6割を占めている。それ以外の地域ではアフリカ10、北米8、中南米6、欧州5となっている。
次にSWFの資産規模を国別に見ると、もっとも大きいのがUAEであり、同国のSWFの合計資産規模は1兆ドルに達し世界全体の2割を占めている。次に資産規模が大きい国は中国(6,200億ドル)、シンガポール(4,900億ドル)、ノルウェー(3,700億ドル)と続き、これら上位4カ国で世界全体のSWF資産の半分に達する。
(続く)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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