2010年07月
2010年07月31日
2010年07月30日
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」に一括掲載されています。
東はアフガニスタンから西はモーリタニアまでのMENA(中東・北アフリカ)22カ国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。
第4回のランキングは、UNCTAD(国連貿易開発会議)が毎年刊行する世界各国の直接投資(FDI)に関する報告書の最新版「World Investment Report 2010」からMENA諸国をとりあげて比較しました。
「World Investment Report 2010」について
UNCTADの「World Investment Report 2010」は、外国直接投資(Foreign Direct Investment, 以下FDI)の最新の状況を世界規模で調査分析した報告書であり対象となっている国は200以上に達する。(http://www.unctad.org/Templates/WebFlyer.asp?intItemID=5535&lang=1)
本稿ではMENA22ヶ国及びパレスチナ自治区のFDI inflows(直接投資流入額)、FDI outflows(直接投資流出額)、FDI inward stock(直接投資流入残高)、FDI outward stock(直接投資流出残高)の2004年~2009年のデータを取り上げ、MENA各国の直接投資の現状を比較することとする。
1. 2009年のFDI inflows(直接投資流入額)
2009年のMENA各国の直接投資流入額(以下流入額)の総額は937億ドルであった。この額は同年の日本の流入額(119億ドル)の約8倍であるが、米国(1,299億ドル)の7割程度で、中国(950億ドル)とほぼ同じ規模である。因みにMENAの流入額は全世界の合計額1兆1千億ドルの8.4%を占めている。(詳細は表「2009年FDI Inflows(対内直接投資)」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-4aFdiInflow2009.xps参照)
国別ではサウジアラビアが最も多い355億ドルであり、サウジ一国でMENA全体の38%を占めている。第2位以下で流入額が50億ドルを超えているのはカタール(87億ドル)、トルコ(76億ドル)及びエジプト(67億ドル)であるが、いずれもサウジアラビアの4分の1乃至5分の1以下にとどまっている。これら上位4カ国でMENAの直接投資流入額の3分の2近くを占めている。5位以下はレバノン(48億ドル)、UAE(40億ドル)、イスラエル(39億ドル)、スーダン(30億ドル)、イラン(30億ドル)である。
10位のアルジェリアから13位のオマーンまでは流入額が20億ドル台であり、14位チュニジアから17位イラクまでは流入額10億ドル台である。18位から23位までの流入額は非常に少なく、バハレーン(2.6憶ドル)、アフガニスタン(1.9億ドル)、クウェイト(1.5億ドル)イエメン(1.3憶ドル)、パレスチナ自治区(3千万ドル)、モーリタニア(-4千万ドル)となっている。なおモーリタニアの流入額がマイナスとなっているのは、2009年中に流入額を上回る投資の引き揚げ額があったためである。これらの国々のうちアフガニスタン、イエメン、パレスチナ自治区は治安の悪さが外国投資家から敬遠される理由と考えられる。
クウェイトはサウジアラビア、カタール及びUAEなど同じGCC産油国に比べて流入額が極端に少ない。同国は世界有数の産油国であり豊かな財政力を誇り、また治安も良好であるにもかかわらずサウジアラビアの250分の1、カタールの60分の1、UAEの30分の1にとどまっている。クウェイトは外国の資本と技術による国内産業の活性化を図ろうと努力しているが、政府と国会が不毛の対立を繰り返して国家発展のビジョンが欠けている。むしろ同国は3章(FDI Outflow、直接投資流出額)で触れるように豊富なオイルマネーを国内ではなく外国に投資する金融立国の様相を呈している。他のGCC産油国が国内産業の振興と外国への投資を両立させていることに比べるとクウェイトのFDIの直接投資の性格は極めて特異である。
2. 2004-09年の直接投資流入額の推移
(表「FDI Inflows in MENA Countries, 2004-2009」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-4bFdiInflowInMENA2004-09.xps参照)
MENA地域の2004年から2009年までの流入額は04年の262億ドルが2005年以降急激に増加し、05年617億ドル、06年には1,076億ドルに達している。この間全世界の投資額も増大しているがMENA地域の伸び率は世界平均を上回っており、その結果、世界全体に占めるMENAの割合も04年3.7%、05年6.4%、06年7.4%と増大し、投資対象地域としてのMENAの存在感が高まりつつあった。
08年は前年の米国サブプライムショックの影響により全世界の流入総額は07年の2.1兆ドルから1.8兆ドルに急減したが、ドバイなど湾岸諸国は未だ影響が及ばずMENAの流入総額は前年より12%増加(1,275億ドル)しており、世界に占める比率も7.2%となっている。
2009年に入ると前年9月のリーマンショックの影響が現れMENA全体のFDI流入額は30%近く減少し937億ドルとなった。しかし世界全体ではそれ以上に減少しており、その結果MENAの世界全体に占める割合はむしろ高まり過去最高の8.4%に達している。
2009年の流入額上位7カ国(サウジアラビア、カタール、トルコ、エジプト、レバノン、UAE及びイスラエル)の過去6年間の推移を見ると(図http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-4cFdiInflowInSaudiEgyptIs.gif参照)、2004年にわずか19億ドルにすぎなかったサウジアラビアは、05年に6倍強の121億ドルとなり、その後も06年183億ドル、07年228億ドル、08年382億ドルと急膨張している。2009年は落ち込んだが、それでも355億ドルを記録しており、2位のカタール(87億ドル)以下を大きく引き離している。
カタールの流入額は2004年は7カ国中で最も少ない12億ドルであったが、2006年には3倍の35億ドルに急増、07年は47億ドルに達した。08年はわずかに減少したが、09年は他のMENA諸国が軒並み減少する中で前年倍増の87億ドルを達成、サウジアラビアに次ぐMENA第2位の流入国となった。
2004年時点で流入額84億ドルと他のMENA諸国を圧倒していたUAEは、05年から08年まで100億ドル台の流入額を維持していたが2009年には前年比3分の1以下の40億ドルに急減、MENA第6位に転落している。
トルコ及びエジプトもUAEと同じような傾向を示し2007年をピークとして2年連続で減少している。トルコの場合は2006年にはサウジアラビアを抜いてMENA1位になったこともあるが、同国の09年のFDI流入額はサウジアラビアの5分の1の76億ドルに落ち込んでいる。イスラエルの流入額は18億ドル(04年)→49億ドル(05年)→148億ドル(06年)→88億ドル(07年)→109億ドル(08年)→39億ドル(09年)と大きな振幅を繰り返している。
(続く)
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