2012年12月

2012年12月30日

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2012年12月29日

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2012年12月28日

(注)本レポートは「マイ・リブラリー(前田高行論稿集)」で一括してお読みいただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0252IslamicFinance.pdf

3.イスラム金融の発展要因と阻害要因
 現代のイスラム金融には正と負の要因がある。正の要因即ち将来の発展を期待させる要因としてはイスラム・マネーの量的拡大とイスラム諸国の経済発展をあげることができる。イスラム諸国の中にはサウジアラビア、クウェイト、UAEなどの大産油国があり、オイル・マネーがイスラム金融に流れ込むルートが生まれている。そしてマレーシア、インドネシアなど東南アジアのイスラム諸国は近年の急速な経済発展により資金需要が旺盛であり通常の西欧型金融(Conventional finance)に加えイスラム金融(Islamic finance)に対する根強い需要がある。さらに昨年の「アラブの春」によりエジプトなど各国にイスラム系政権が誕生するとイスラム金融が更に広まるとの見方がある。


 一方イスラム金融の負の要因即ち発展を阻害する要因も少なくない。最も広く知られているのがコーランが利子を禁止していることである。豚肉・賭博など各種の禁忌(ハラーム)もある。イスラム教の教祖ムハンマドはアラーの啓示を受ける前は隊商の交易商人であった。そのためコーランあるいは預言者の言行録スンナには経済活動に触れたものが少なくない。それらはシャリア(イスラム法)として今も社会の規範となっている。


 ムハンマドの生まれた7世紀は後の重商主義、資本主義へと連なる世界の通商時代の黎明期である。同じ一神教でも紀元前の牧畜農耕時代に生まれたユダヤ教やキリスト教とは時代が異なることに留意すべきであろう。イスラムは比較的歴史が新しいため7世紀の規範がそのまま現代の社会経済活動に色濃く反映している。現代世界経済の事実上の標準(デファクト・スタンダード)である西欧流資本主義とイスラム経済の折り合いが良くないのはある意味で当然かもしれない。


 「アラブの春」はイスラム金融にとってプラス要因だと上述したが、実はこれは同時にマイナス要因でもある。何故なら「アラブの春」により厳格なイスラム主義(サラフィ―主義)思想が広まると、経済行為をコーランやスンナで厳格に評価しようとする動き、即ちシャリア法適合(シャリア・コンプライアンス)が強まる傾向がある。これは二つの側面で経済の動きを制約する。一つは厳格なシャリア法の適用が自由な経済活動を最も重視する西欧型経済金融制度と対立することであり、もう一つの問題はシャリア法の解釈がイスラム各国で異なる結果、イスラム金融制度の標準化が難しくなることである。


 実際にこのような事態が多発しており、国家を跨る大型ファイナンス組成などで支障を生じている。世界のイスラム金融の二大拠点は中東のバハレーンと東南アジアのマレーシアである。中東はサラフィストの影響が強まりシャリア・コンプライアンスが厳格に解釈される傾向にある一方、東南アジアは柔軟な解釈でイスラム・マネーを取り込もうとしている。バハレーンとマレーシアにあるそれぞれのイスラム金融国際機関は制度の統一を模索しているが、その作業は遅々として進んでいないのが実情である。


 西欧の金融危機で行き場を失った大量のオイル・マネー。その一方で統一化が遅れ国際的な大型案件を組成できないイスラム金融機関。両者のすれ違いは当面解消しそうにない。その結果生まれた傾向が「イスラム金融の国内化」であろう。即ちシャリア法の国内解釈を統一しイスラム金融を育成しようとする国にイスラム投資マネーが集まると言う寸法である。こうして当面イスラム金融は各国の国内ベースで成長するのであろう。


 このように見れば本稿冒頭でHSBCとStanChartが表面上対照的な動きを示す一方、イスラム金融は今後も拡大すると言う見解を共有していることの意味が理解できる。つまり両銀行を含めイスラム銀行はイスラム金融制度が安定し発展が見込まれる国に対しては活動を強化する一方、制度が不安定でシャリア法解釈の統一に熱心でない国に対しては支店を閉鎖するなど活動を縮小しているのである。現在はイスラム金融機関が国家を選択している時代だと言えよう。


(完)


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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp



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2012年12月27日

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