2014年12月
2014年12月24日
(注)本シリーズは「マイライブラリ(前田高行論稿集)」で一括してお読みいただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0333MenaRank14.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その14)
4.MENA5カ国と日本のCPI指数の変化(2010~2014年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/14-G01.pdf 参照)
UAE、トルコ、サウジアラビア、エジプト、イランの5カ国及びMENA19カ国平均に日本を加えた2010年から2014年までのCPI指数の変化を比較すると、UAEは2010年のCPI指数63が2014には70に改善している。この間日本は78(10年)→80(11年)→74(12年)→74(13年)→76(14年)と2011年の81から12年及び13年は急落、14年に少し改善されたが2011年の水準に戻っていない。両国の差は2011年の12ポイントから2014年には6ポイントに縮まっている。
トルコの場合は44(10年)→42(11年)→49(12年)→50(13年)→45(14年)であり2013年が過去5年間で最も良い。サウジアラビアは過去5年間40ポイント台で推移している。MENA平均値の推移は40(10年)→39(11年)→40(12年)→39(13年)→40(14年)と殆ど変化がない。
エジプトは31(10年)→29(11年)→32(12年)→32(13年)→37(14年)であり2011年以降改善の兆しが見られる。イランは22(10年)→27(11年)→28(12年)→25(13年)→25(14年)と20台後半に低迷しており腐敗度は高いままである。
(完)
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
2014年12月23日
(注)本レポート(1)~(5)は「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0334MenaRank9.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その19)
中東北アフリカ諸国は英語のMiddle East & North Africaの頭文字をとってMENAと呼ばれています。MENA各国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。なおMENAの対象国は文献によって多少異なりますが、本シリーズでは下記の19の国と1機関(パレスチナ)を取り扱います。(アルファベット順)
アルジェリア、バハレーン、エジプト、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェイト、レバノン、リビア、モロッコ、オマーン、パレスチナ自治政府、カタール、サウジアラビア、シリア、チュニジア、 トルコ、UAE(アラブ首長国連邦)、イエメン、
これら19カ国・1機関をおおまかに分類すると、宗教的にはイスラエル(ユダヤ教)を除き、他は全てイスラム教国家でありOIC(イスラム諸国会議機構)加盟国です。なおその中でイラン、イラクはシーア派が政権政党ですが、その他の多くはスンニ派の政権国家です。また民族的にはイスラエル(ユダヤ人)、イラン(ペルシャ人)、トルコ(トルコ人)以外の国々はアラブ人の国家であり、それらの国々はアラブ連盟(Arab League)に加盟しています。つまりMENAはイスラム教スンニ派でアラブ民族の国家が多数を占める国家群と言えます。
第19回のランキングは、「世界経済フォーラム(World Economic Forum, 略称WEF)」が発表した「The Global Enabling Trade Report 2014」(*)の中から「The Enabling Trade Index (貿易円滑指数)」についてMENA諸国をとりあげて比較しました。
* ホームページ:
http://www.weforum.org/reports/global-enabling-trade-report-2014
1.「The Enabling Trade Index」について
「The Enabling Trade Index」(貿易円滑指数、以下ETI指数)は、毎冬スイスで開催される「ダボス会議」の主催者として世界に名を知られている「世界経済フォーラム(World Economic Forum, 略称WEF)」が作成したものである。WEFでは2008年から「The Global Enabling Trade Report」を発表しており、その中で各国をETI指数によってランク付けしているが、第5回目の今年は138カ国が対象となっている。
ETI指数は、(1)市場アクセス、(2)通関手続きの透明性、(3)運輸・通信インフラ及び(4)ビジネス環境の4つの分野に分けられている。4つの分野は以下の7つのPillarと呼ばれるもので構成され、それぞれのPillarごとに点数をつけて国際比較されている。
市場アクセス(Market Access)分野のPillar
(1) Domestic market access
(2) Foreign market access
通関手続きの透明性(Border Administration)分野のPillar
(3) Efficiency and transparency
運輸・通信インフラ(Infrastructure)分野のPillar
(4) Transport infrastructure
(5) Transport services
(6) Availability and use of ICTs
ビジネス環境(Business Environment)分野のPillar
(7) Operating environment
各Pillarの採点は各国の大学研究機関に委託し、国際統計をベースにして算定されている。日本の委託先は一橋大学である。
今年度のレポートでランク付けの対象となった国の数は138カ国であり、前回より6ヶ国増えているが、そのうちMENAは17カ国で国の数では前回と同じであるが、今回調査ではシリアが除外され、その一方リビアが新たに加わった。MENAのうちランク付けされていない国は今回除外されたシリアのほか、イラクおよびパレスチナ自治政府である。
(続く)
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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0333MenaRank14.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その14)
3.2010-2014年の世界順位の変化
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/14-T02.pdf 参照)
2010-2014年の各国のMENA順位及び世界順位の変動を見ると、2010年から2012年まではカタールがトップであったが、UAEは2012年に世界27位でカタールと肩を並べるとその後は2013年26位、2014年25位と毎年順位を上げMENAトップを続けている。カタールは2010年に世界19位でMENA2位のUAE(28位)をかなり上回っていたが、その後は20位以下に転落、27位(2012年)→28位(2013年)→26位(2014年)とここ3年は20位台後半に停滞している。イスラエル過去5年間MENA3位であるが、その世界順位は30位(2010年)→36位(2011年)→39位(2012年)→36位(2013年) →37位(2014年)と世界30位台後半に後退している。
これら3カ国に続くバハレーン、サウジアラビア、ヨルダン、トルコ、オマーンおよびクウェイト各国は50位~60位台を上下している。以上の9か国のうちイスラエルおよびトルコを除く7か国は君主制国家であり、MENAでは君主体制が一貫して腐敗度が低いとされていることがわかる。
今回クウェイトに次ぐ順位であったチュニジアは5年間を通じてMENAでは10位でありMENA19か国では丁度真ん中に位置している。しかい同国の世界順位は59位(2010年)→73位(2011年)→75位(2012年)→77位(2013年) →79位(2014年)と年々下降の一途をたどっている。このことはMENAの腐敗度が世界全体に比較して悪化していることを示しており、実際にMENAの世界平均順位は2010年の84位から2014年には91位に低下している。
エジプトとアルジェリアは世界順位100位前後を往復しており、エジプトの場合5年間の世界順位は98位(2010年)→112位(2011年)→118位(2012年)→114位(2013年) →94位(2014年)であり、アルジェリアは105位(2010年)→112位(2011年)→105位(2012年)→94位(2013年) →100位(2014年)となっている。
上記以外のレバノン、イラン、シリア、イエメン、リビアおよびイラクの各国は5年間を通じて世界順位が100位以下である。その中ではシリアの順位の下落が顕著であり2010年の127位から2012年には144位そして今回は159位である。アサド大統領の独裁政治により縁故主義が蔓延し、さらにシーア派とスンニ派の対立、「イスラム国(IS)」のようなイスラム過激派の台頭により内政が極度に混乱していることが腐敗度を増長していることは間違いない。同じような理由でイラクも過去5年間を通じて世界の最下位クラスにとどまっている。
(続く)
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2014年12月22日
2014年12月21日
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http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0333MenaRank14.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その14)
2.MENA諸国のCPI指数と順位
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/14-T01.pdf 参照)
2014年度のMENA腐敗認識指数はパレスチナ自治政府を除く19カ国が評価対象となっている。この中で最も腐敗度が低いと評価されたのはUAEであり、同国のCPI指数は70、世界順位は25位である。これは日本(CPI指数76、世界順位15位)、米国(同、74、17位)よりは低いが、フランス(同69、26位)よりも上位である。
UAEに次ぐMENA第2位はカタール(CPI指数69、世界順位26位)、3位はイスラエル(同60、37位)であり、以上3カ国が世界50位以内である。以下バハレーン、サウジアラビア及びヨルダン(ともにCPI指数う49、世界順位55位)、トルコ及びオマーン(同45、64位)、クウェイト(同44、67位)と続いている。
MENA10位以下ではチュニジア(CPI指数40、世界順位79位)、モロッコ(同39、80位)までが世界175カ国の上位グループに入っており、これにエジプト(同37、94位)、アルジェリア(同26、100位)を加えた13カ国が世界100位以内である。
上記以外のMENA6カ国はCPI指数、世界順位共に低く、レバノン及びイランは世界136位、シリアは159位、イエメン161位、リビア166位、イラク170位である。リビアとイラクは世界の最下位グループであり、いずれも腐敗度が高いとされている。因みに世界最下位は北朝鮮及びソマリアでCPI指数は一桁の8である。
MENAの上位9カ国のうち6カ国はGCCを結成する君主制(王制、首長制、スルタン制)国家であり、これにヨルダンを加えると実に9カ国中の7カ国が君主制国家で、イスラエルとトルコの2カ国のみが共和制国家である。また昨年の世界順位と比較するとサウジアラビアは63位から55位に8ランクアップしており、ヨルダンは66位から55位へ11ランク上がっているのに対して、トルコは昨年の53位から11ランクも世界順位が下がっており、イスラエルも1ランク落ちている。このことから見る限りMENAでは君主制国家が清潔であるのに対して共和制国家が腐敗しており、昨年よりも今年はその傾向が強くなっているのである。
また非君主制国家で上位に位置しているイスラエル及びトルコはそれぞれユダヤ民族及びトルコ民族の国家で非アラブ民族国家である。そして10位のチュニジア以下の10カ国のうち8カ国はアラブ民族の共和制国家である。これらのことからMENAは王制国家が腐敗度の少ない清潔な国家であるのに対し、アラブの共和制国家は腐敗度が高いと言う結果を示している。
なおMENA19カ国の平均CPI指数は40、平均世界順位は91位であり、MENAは世界175カ国の中では平均をわずかに下回っている。
CPIレポートは「貧困と腐敗の間には強い相関関係がある」と指摘しており、上位にUAE、カタールなどの湾岸産油国或いは経済力の強いイスラエル、トルコが並んでいることはレポートの指摘を裏付けている。しかしながらMENA最下位グループのリビア、イラク、シリア及びイエメンを比較すると貧困と腐敗が必ずしも相関関係にあるとも言えない。リビア及びイラクは産油国として豊かな石油収入があり国家としてのGDPはシリア、イエメンより大きく豊かである 。それにも関らず両国はシリア、イエメンより腐敗度が高い。リビア及びイラクでは国家の富の分配が不平等であり、そこに腐敗が介在していることをうかがわせる。
因みに世界でCPI指数が最も高い国(即ち腐敗度が最も低いとされた国)はデンマークでそのCPI指数は92である。また日本(CPI指数76、世界15位)及び米国(同74、17位)は既に述べたとおりMENAトップのUAEよりも高い。そして中国はCPI指数36、世界順位100位であり、MENA13位のアルジェリアと同じレベルである。
(続く)
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