2016年07月
2016年07月18日
(注)本シリーズは「マイライブラリ(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
(MENAなんでもランキング・シリーズ その4)
8.1990-2015年末のFDIアウトバウンド残高の推移
(まだまだ少ないMENAからの対外投資、世界に占める比率は1.7%!)
(1)MENAのFDIアウトバウンド残高
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/4-T08.pdf 参照)
1990年末のMENAのFDIアウトバウンド残高は合計111億ドルであり、2000年末には2.5倍の272億ドルに増加した。しかし世界全体に占める割合は0.4%であり、外国直接投資(FDI)の出資国(FDIアウトバウンド国)としての存在感は殆どなかった。その後FDIが世界的規模で拡大する中でMENA諸国の投資額も増え、2010年末の対外投資残高は2,611億ドルとなり、2012年末には3千億ドルを超え、2015年末の残高は4,349億ドルに達して全世界に占める割合も1.7%となった。全世界に占める割合は2000年当時の0.4%からはかなり上昇しておりMENAの対外投資における存在感も少しずつ高まっている。因みに2015年末のMENAの対外投資残高は中国(1兆100億ドル)の4割強であり、日本(1.2兆ドル)の3分の1、米国(6兆ドル)の14分の1である。
(トップを走り続けるイスラエルに追いついたUAE!)
(2)主要6カ国のFDIアウトバウンド残高の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/4-G05.pdf 参照)
2015年末のFDIアウトバウンド残高上位6カ国(イスラエル、UAE、サウジアラビア、トルコ、カタール及びクウェイト)について1990年以降の残高の推移を見ると、1990年の対外投資残高は最も多いクウェイトでさえ37億ドルにすぎず、同じ湾岸産油国のUAEはわずか1千万ドル、カタールに至ってはゼロと言う状況であった。
その後2000年末にイスラエルの残高は100億ドル近くに増加し、さらに2010年末にはイスラエルとUAEの両国の残高が急激に膨らみ500億ドルを突破している。その他の国の残高もクウェイト282億ドル、サウジアラビア265億ドル、トルコ225億ドル、カタール125億ドルと急増している。
2010年以降はクウェイトが年ごとに浮き沈みはあるものの、6カ国とも上昇傾向にあり、2015年と比較するとカタールは3.5倍、サウジアラビアとトルコは各々2.4倍、2.0倍と2倍以上の伸びを示している。イスラエルとUAEは2010年以降MENAの1位と2位を占め、MENAの中で突出する状況が続いている。ただ両国を比較すると2014年までは両国は同じように増加を続けていたが、2015年にはUAEの残高が874億ドルに急増し、イスラエルの残高893億ドルに迫っている。
躍進が目覚ましいのはカタールであり、同国の場合2000年末の投資残高は1億ドル未満に過ぎなかったが、2010年には125億ドルに急成長しており2015年末の残高は433億ドルと5年間で3.5倍に増えている。
以上
(MENAなんでもランキング・シリーズ4 海外直接投資 完)
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前田 高行 〒183-0027
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
2016年07月15日
(注)本シリーズは「マイライブラリ(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
(MENAなんでもランキング・シリーズ その4)
(イスラエル・UAEの2強とそれに続くサウジアラビア!)
7.2015年のFDI Outward Stock(FDIアウトバウンド残高)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/4-T07.pdf 参照)
2015年末のMENA19カ国及び1機関(パレスチナ自治区)のFDI Outward Stock(FDIアウトバウンド残高)は4,349億ドルである。全世界の対外投資残高25兆ドルに占める比率は1.7%でMENA各国の対外投資は他の地域に比べて低い水準にとどまっている。
FDIアウトバウンド残高が最も多い国はイスラエルの893億ドルであり、これに次ぐのがUAEの874億ドルで第3位はサウジアラビアの633億ドルである。残高が500億ドルを超えるのはこの3カ国だけでありMENA諸国全体の55%を占めている。これに次ぐ第4位はトルコ(447億ドル)、カタール(433億ドル)である。これら5か国はいずれも前年よりも増加しており、増加額が大きいのはUAE211億ドル、サウジアラビア186億ドルである。
第6位はクウェイト(316億ドル)、第7位リビア(202億ドル)であるが、クウェイトは前年より50億ドル減少している。この他第8位バハレーン(146億ドル)、第9位レバノン(126億ドル)までが残高100億ドル以上の国で、これら9カ国でMENA全体の94%を占めている。MENAの対外投資は一部の国に偏っていることを示している。
上位9か国のうち5カ国(UAE、サウジアラビア、クウェイト、カタール、バハレーン)はGCC加盟国であり、2000年以降の原油価格高騰により生まれた豊富なオイルマネーが外国投資に振り向けられた結果と言えよう。なおクウェイトの場合、FDIインバウンドは単年度及び累積残高ともMENA諸国の中でも低いレベルにとどまっているのに対し(1、3章参照)、FDIアウトバウンドは単年度ではMENA4位(その2参照)、残高では6位であり、オイルマネーが継続的に国外に向かっていることを示している。
残高が100億ドル未満の国は、エジプト(77億ドル)、オマーン(74億ドル)、モロッコ(46億ドル)、イラン(25億ドル)、イラク(21億ドル)、アルジェリア(18億ドル)等があり、ヨルダン、イエメン、パレスチナ自治政府、チュニジア及びシリアは投資残高が10億ドル未満である。
(続く)
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