2017年01月

2017年01月22日

(注)本レポート(3回)は「マイライブラリ(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0396SovereignRating2017Jan.pdf


(2015年以降続出する格付け下落!)

3.2014年1月以降の格付け推移

(http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-01.pdf参照)

ここでは以下の10カ国について2014年以降各年の年初及び年央時点における格付けの変化をグラフで見ることとする。

 

ドイツ、米国、英国、中国、日本、サウジアラビア、インド、ロシア、ブラジル、ギリシャ

 

ドイツは過去3年間常に最高のトリプルAの格付けを維持している。英国は一昨年末までドイツと並びトリプルAの格付けを受けていたが、昨年前半に一挙に2段階下がり、現在はAAである。同国は昨年6月の国民投票によるEU離脱決定が懸念され、ソブリン格付けの引き下げにつながった。米国は財政赤字が悪化したことなどにより数年前から格付けはトリプルAより1ランク下のAA+を続けている。現在の英国のソブリン格付けAAは米国よりも低い。

 

ドイツ、米国、英国を最上級格付け国とすれば、中国、日本及びサウジアラビアの3カ国はこれに次ぐ格付けランクを保っている。これら3か国は2015年上期までは共に最上級(AAA)から3階級下のAA-の格付けであった。しかし2015年下期に日本とサウジアラビアが1ランク下のA+に格下げされ、中国は従来通りのAA-を維持したため3カ国の間に格差が生まれた。さらに翌2016年上期にはサウジアラビアが一挙に2ランク下がった。この結果今年1月現在のソブリン格付けは中国がAA-、日本はA+、サウジアラビアはA-となっている。世界的な景気後退の中でも国内経済に支えられた中国が比較的堅調に推移していることを評価されたのに対して、日本は景気後退の影響をまともに受け、またサウジアラビアは石油価格の低迷により財政状況が悪化したため相次いでソブリン格付けを引き下げられている。

 

新興経済国BRICsを構成しているブラジル、ロシア、インド及び中国のうち、中国を除く3カ国は2014年1月現在ではブラジルはBBB、ロシアとインドがBBB-であり、いずれも格付け上位グループの投資適格の範疇であった。しかし2014年上期にブラジルが1ランク下がり、ロシア及びインドと横並びとなった。2015年上期にはロシアのソブリン格付けがBB+に引き下げられ、同国は投資不適格とされている。

 

その後、ブラジルの経済が急激に悪化、同国の格付けは2015年下期にBB+に格下げされ、昨年上期にはさらに1ランク下げられている。この結果今年1月現在の3カ国の格付けはインドがBBB-、ロシアはBB+、ブラジルはBBであり、インドは投資適格であるが、ロシア及びブラジルは投資不適格とされている。

 

なお欧州金融危機の引き金となったギリシャの格付けの推移を見ると、2014年1月時点ではB-であった。その後同年下期に若干改善され格付けはBとなったが、金融危機が表面化し財政緊縮策が不可避になった2015年上期には一挙に4ランク下がりCCCとなった。S&Pの定義ではCCCは下から3番目であり「債務者は現時点で脆弱であり、その債務の履行は、良好な事業環境、財務状況、及び経済状況に依存している」とされ、ギリシャは破綻の一歩手前にあるとみなされていた。その後同国の状況は改善傾向にあり、今年1月現在の格付けは3年前と同じB-に戻っている。

 

以上

 

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        前田 高行         183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

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2017年01月20日

drecom_ocin_japan at 13:32コメント(0)トラックバック(0)今日のニュース 

(注)本レポート(3回)は「マイライブラリ(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。

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2.1月現在の各国の格付け状況

(表:http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-G-3-01.pdf参照)

 

今回の格付けは半年前と比べ欧米先進国、BRICs諸国、アジア及びMENA各国とも大きな変化はなかった。

 

(極東4か国の中で一歩抜け出した韓国、後塵を拝する日本!)

(1)欧米先進国および極東4か国の格付け

ドイツ、スイス、カナダ、オーストラリア、シンガポールなどは引き続きトリプルAの最高格付けを維持している。同じEU諸国でもオーストリアは1ランク下のAA+で、英、仏、ベルギーはさらに1ランク低いAAにとどまっている。経済力が世界一の米国の格付けはAA+である。

 

極東アジアの日本、中国、韓国及び台湾のうち韓国はこれまでのAA-からAAにアップし英仏或いはカタール、クウェイト、アブダビなど中東湾岸産油国と同格である。中国と台湾は半年前のト変わらずAA-である。これら4か国に対して日本はさらに1ランク低いA+の格付けにとどまっており、イスラエル或いはアイルランドと同格である。

 

(アブダビ、カタールより大幅に劣るサウジアラビア!)

(2)GCC6か国を含むMENA諸国の格付け

GCC6カ国のうちクウェイト、カタールおよびアブダビ(UAEは首長国毎の格付けでありドバイは格付けされていない)は上記の通りAAである。GCC最大の経済規模を誇るサウジアラビアは昨年前半まではこれら3か国と同じランクであったが、現在はA-であり、3か国とは4ランクの差がある。原油価格の低迷で同国の財政は厳しい試練に直面しており、外貨準備高が急速に減少しただけでなく、7年ぶりに国債発行を余儀なくされている。財務改善のめどが立たないことに対し格付け機関は厳しい評価を下している。

 

財務状況が悪化しているのはオマーンおよびバハレーンも同様であり、オマーンは昨年1月のAランクから現在はBBB-へ4ランク落ちている。因みにBBB-は投資適格の最低ランクである。またバハレーンは昨年下期からさらに1ランク格下げされ、現在の格付けは投資不適格のBB-である。

 

 その他のMENA諸国ではイスラエルがA+であるがこれは日本と同格である。モロッコはBBB-でかろうじて投資適格の格付けを維持している。これに対してトルコは昨年後半にBB+からBBに格下げされ投資不適格のままであり、ヨルダンはトルコよりさらに1ランク低くバハレーンと同じBB-にとどまっている。エジプト、レバノン及びイラクはこれらの国々より3ランク低いB-の格付けであり、EUのギリシャとおなじ格付けである。

 

(東南アジア諸国は投資適格と不適格の境目に混在!)

(2)BRICsおよびアジアの発展途上国の格付け

アジア・オセアニア地域ではオーストラリア、シンガポールおよび香港が独、スイスなど西欧諸国に並ぶ最上級AAAの格付けであり、東南アジア諸国ではタイがBBB+、フィリピンはBBB、インドがBBB-である。BBBS&Pの格付け定義では「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」とされ投資適格の中で最も低いランクである。

 

そしてインドネシアはBB+でありロシアあるいはポルトガルと同じ投資不適格の格付けであり、ベトナムはBB-である。投資格付けBBの定義は「より低い格付けの発行体ほど脆弱ではないが、事業環境、財務状況、または経済状況の悪化に対して大きな不確実性、脆弱性を有しており、状況によっては債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある」とされ、投機的要素が強いとみなされている。

 

BRICs諸国のうち中国は上記の通りAA-であり、インドは南アフリカと同じ投資適格では最も低いBBB-である。ロシアはBB+、ブラジルはBBで共に投資不適格の範疇とされている。

 

(続く)

 

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        前田 高行         183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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2017年01月19日

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http://mylibrary.maeda1.jp/0396SovereignRating2017Jan.pdf

1.ソブリン格付けについて

ソブリン格付とは国債を発行する発行体の信用リスク、つまり債務の返済が予定通りに行われないリスクを簡単な記号で投資家に情報提供するものである。「ソブリン格付け」は、英語のsovereign(主権)に由来する名称であり、国の信用力、すなわち中央政府(または中央銀行)が債務を履行する確実性を符号であらわしたものである。ソブリン格付けを付与するにあたっては、当該国の財政収支の状況、公的対外債務の状況、外貨準備水準といった経済・財政的要因だけでなく、政府の形態、国民の政治参加度、安全保障リスクなど政治・社会的要因を含めたきわめて幅広い要因が考慮される。

 

このようなリスク情報を提供しているのが格付け会社であり、全世界には多数の格付け会社があるが、その代表的なものはStandard & Poors(S&P)Moody’s 及びFitchRatingの3社である。3社で世界のシェアの9割を占めており、特にS&PMoody'sは各々40%前後のシェアを有している。

 

格付け3社はそれぞれ独自の格付け記号を用いており、S&Pでは最上位のAAAから最下位のCまで9つのカテゴリーに分けている。これら9段階のうち上位4段階(AAAからBBBまで)は「投資適格」と呼ばれ、下位5段階(BBからCまで)は「投資不適格」又は「投機的」と呼ばれている。なおAAからCCCまでの各カテゴリーには相対的な強さを示すものとしてプラス+またはマイナス-の記号が加えられている。カテゴリーごとに詳細な定義が定められているが、S&Pの定義では最上位のAAAは「債務を履行する能力が極めて高い」とされ、一方最も低いCは「債務者は現時点で脆弱であり、その債務の履行は良好な事業環境、財務状況、及び経済状況に依存している」である。

S&Pの格付け定義については下記参照:

http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-G-3-02.pdf

 

本レポートは3社の中で最もよく知られているS&Pのソブリン格付けに基づき、日米欧の先進国の他、中国、ブラジル、ロシアなどの新興国並びにMENA諸国および主要な発展途上国を取り上げた。レポートは毎年1月1日または71日時点の格付け状況について前回の格付けと比較しており、今回は2017年1月1日現在の格付けを取り上げて各国を横並びで比較し、同時に各国ごとに前回(2016年7月1日)の格付けと比較して半年の間のソブリン格付けの変化の状況を解説する。また今回は日本、米国、英、独、ロシアなど世界10か国について2014年1月以降の3年間にわたる格付けの推移を比較している。

 

*これまでのレポートは下記ホームページ参照。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/SovereignRating.html

 

(続く)

 

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2017年01月18日

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