2017年04月
2017年04月30日
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0407ImfApr2017.pdf
2017.4.30
前田 高行
(MENAで断トツのカタール!)
4.2017年の一人当たりGDP
(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-10.pdf 参照)
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-03.pdf 参照)
日本の一人当たりGDPは38,282ドル、米国は59,609ドル、ドイツは41,244ドルである。米国は日本の1.6倍、ドイツは1.1倍である。また韓国は29,115ドルであり、米国の2分の1以下、日本の8割弱である。BRICsと呼ばれる有力新興国のロシア、中国、インドはそれぞれ10,885ドル、8,481ドル、1,850ドルである。インドは今年7.2%、来年7.7%と中国を上回る高い成長率が見込まれているが(上記1. 2017/2018年の経済成長率参照)、一人当たりGDPはまだまだ低く、中国の5分の1、日本の20分の1、米国の30分の1に過ぎない。
MENA諸国の一人当たりGDPは各国間の格差が極めて大きい。LNGの輸出で潤うカタールの一人当たりGDP64,447ドルは米国をしのぎ日本の1.7倍で世界のトップクラスである。MENAで一人当たりGDPが1万ドルを超える国はカタールのほかUAE(40,162ドル)、イスラエル(39,126ドル)、クウェイト(29,240ドル)、バハレーン(25,495ドル)、サウジアラビア(21,848ドル)、オマーン(17,485ドル)およびレバノン(11,616ドル)の8か国である。
上位7カ国のうちイスラエルを除く6か国はGCC諸国であり、石油あるいは天然ガスの恩恵を受けていることがわかる。特に6か国の中で人口がバハレーンに次いで少ないカタールは他を大きく引き離している。GCC6か国の平均一人当たりGDPは33,113ドルに達する。
しかし同じ産油国でありながらイラン、イラク、アルジェリアなどは一人当たりGDPが5千ドル前後であり、GCCと大きな格差がある。MENAで最も貧しいのはイエメンであり同国の一人当たりGDP(907ドル)は実にカタールの70分の1にとどまっている。
なお一人当たりGDPは各国のGDP総額を人口数で割ったものであるが、IMF統計における計算の母数となる人口についてGCC諸国の場合特に注意すべき点がある。例えばカタールの人口は約270万人(WEO 4月版による)で同国の一人当たりGDP64,447ドルは同国のGDP(1,740億ドル。前項参照)をその人数で割ったものである。しかし同国人口のうち80%以上は出稼ぎ労働者が占めており、カタール国籍を有する自国民は40万人足らずと言われる。通常、統計上の人口は国籍を有する者のみが対象で一時的な出稼ぎ労働者は含まないが、カタールの一人当たりGDPには出稼ぎ労働者も含まれており実態を正確には表していないと言える。このことは同じように外国人比率が高いUAE或いはクウェイトについても言えることであり、3分の1が外国人であるサウジアラビアの場合も程度の差はあれ同様である。
このような要素を加味してGDPを算出した統計は見当たらないが、カタール、UAE、クウェイトの実際の一人当たりGDPはIMF公表数値の数倍に達すると考えられ、これら湾岸産油国の一人当たりGDPが世界のトップクラスであることは間違いない。
(続く)
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前田 高行 〒183-0027
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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2017年04月28日
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2017.4.28
前田 高行
(米国のGDPは全世界の4分の1!)
3.2017年の各国の名目GDP
(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-09.pdf 参照)
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-B-2-02.pdf 参照)
IMFでは今年の世界の名目GDP(at Current Price)総額を78兆ドルと推定している。地域別ではEUが16兆ドル、全体の21%を占めている。またASEAN5か国は2.3兆ドル(全体の3%)、MENA地域は3.3兆ドル(同4.2%)である。
国別では米国が世界トップの19兆ドルで全世界に占める割合は25%、同国一国だけで世界のGDPの4分の1を生み出している。米国に次ぐGDP大国は中国の12兆ドルであり世界全体の15%を占めている。この2か国が世界でも突出している。第3位は日本(4.8兆ドル)であるが、米国の4分の1あるいは中国の4割にとどまっている。EUの経済大国ドイツのGDPは3.4兆ドルであり、EU全体の5分の1を占めている。その他の主な国を見るとインドは2.5兆ドル、韓国1.5兆ドル、ロシア1.6兆ドルなどである。
MENA17カ国(エジプト、シリアを除く)の中で2017年の名目GDPが最も大きい国はトルコの7,940億ドルであり、サウジアラビアが7,070億ドルで続いている。この2カ国がMENAの合計GDPに占める比率はそれぞれ21%と19%であり、両国はMENA諸国の中では突出している。第3位はUAEの4,070億ドル、第4位イラン(3,680億ドル)はいずれもトルコ或いはサウジアラビアの半分程度にとどまっている。
5位以下11位まではイスラエル(3,400億ドル)、イラク(1,890億ドル)、アルジェリア、カタール(共に1,740億ドル)、クウェイト(1,270億ドル)、モロッコ(1,060億ドル)であり、以上10カ国が年間GDP1千億ドルを超える国々である。UAE、カタール、クウェイトなど人口の少ない産油国がイラン、イラクなど地域の大国とそん色のないGDPを誇っている。
GDPが1千億ドル未満の国は、オマーン(710億ドル)、リビア、レバノン(共に540億ドル)、ヨルダン(410億ドル)、チュニジア(400億ドル)、バハレーン(340億ドル)、イエメン(270億ドル)である。MENAでGDPが最も小さいバハレーン、イエメンはサウジアラビア或いはトルコの20分の1程度である。
(続く)
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2017年04月27日
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2017.4.27
前田 高行
(MENAの多くは前回より下方修正された2017年の成長率!)
2.前回(2016年10月)と今回(2017年4月)の比較
(表http://menadabase.maeda1.jp/1-B-2-08.pdf 参照)
(1) 世界および主要地域・国
上述のとおり今回(WEO2017Apr)の全世界の成長率見通しは今年(2017年)が3.5%であり、来年(2018年)は3.6%である。これに対して前回(WEO2016Oct)の見通しでは2017年が3.4%、2018年は3.6%であり、2017年については前回より0.1%上方修正され、2018年は横ばいである。
2017年の見通しについて国・地域毎に前回と比較すると、国別では日本が0.7%上方修正され1%を超える成長率(1.2%)が達成されると見ている。米国、ドイツ、中国なども0.1~0.4%とわずかではあるが上方修正されている。これに対して韓国及びインドの今年の成長率は前回(2016年10月)の予測よりは0.4%下がっている。また地域別ではEUは1.7%から2.0%にアップすると予測が変更される一方、ASEAN-5は5.1%から5.0%とわずかながら経済が減速すると見られ、MENA地域について3.4%→2.6%とかなり下方修正されている。
来年2018年の予測については全世界成長率は昨年10月の予測と今回の予測は共に3.6%と変わらず、EU、ASEAN-5、MENAについても昨年10月の見通しと殆ど変化がない。国ごとに見ると米国が2.1%→2.5%に見直され、ドイツ、ロシア、日本もそれぞれ+0.2%、+02%。+0.1%と上方修正されている。中国の2018年成長率は6.2%で前回10月の6.0%よりも改善されている。一方韓国は3.1%(前回10月見通し)→2.8%(今回4月見通し)と下方修正されている。世界最大のGDPを誇る米国は今年、来年と先進国の中では比較的高い成長率を維持する見通しである。
(2)MENA諸国
MENA各国の今年の成長率を昨年10月と今回4月で比較すると大半の国は下方修正されている。主要な国ではエジプトが4.0%→3.5%、イラン4.1%→3.3%、トルコ3.0%→2.5%、サウジアラビア2.0%→0.4%といずれも下方修正されており、日米などの先進国に比べMENA諸国の経済は停滞が続くと予測されている。
さらに来年(2018年)の成長率予測を昨年10月と今年4月で比較すると、こちらは上方修正と下方修正が相半ばしている。上方修正された国はイラン(4.1%→4.3%)、イラク(0.7%→2.6%)、クウェイト(2.6%→3.5%)、UAE(3.1%→4.4%)などの各国であり、これに対して下方修正されたのはエジプト(4.8%→4.5%)、モロッコ(4.2%→3.9%)、カタール(3.2%→2.8%)、サウジアラビア(2.6%→1.3%)等の国々である。エジプト及びサウジアラビアは今年及び来年ともに今回4月の見通しは下方修正されており、IMFは厳しい評価を下している。
(続く)
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2017年04月26日
・サルマン国王家家系図:http://menadabase.maeda1.jp/3-1-7.pdf
・故スルタン元皇太子家家系図:http://menadabase.maeda1.jp/3-1-5.pdf