2005年11月08日

サウジ皇太子、英国戦闘機購入を示唆?

11/8 Arab News (Saudi Arabia)
 サウジアラビア皇太子スルタン副首相兼国防相は、Tabuk空軍基地視察の席上、サウジの空軍力を中東一に増強する意向を示した。
 先月国防省高官は英国が同国製Typhoon戦闘機をサウジが購入することを期待しているようだと語っている。英Guardian紙はサウジ・英国で400億ポンドの購入契約が密かに締結された、と報じたが、サウジ筋はこれを否定している。

コメント:
 英国がサウジアラビアに対する戦闘機売り込みを画策しているようだ。今回のスルタン皇太子発言は実現のための地ならしかもしれない。英国及び米国の軍事メーカーにとって中東の湾岸諸国は戦闘機など高額兵器の最大の顧客であったが、最近は大型商談が途絶えており、毎年パリとドバイで行われる兵器見本市ももっぱら小型ミサイルや小火器或いはSecurity装置が商談の中心である。産油国側の理由は財政難であり、また国際情勢では戦争など国家間の紛争が減少する一方、テロ事件とその対策が緊急の課題となっており、戦闘機・戦車・大規模防空網などの大型軍備に対する需要が減っている。
 このため米英の軍需産業は苦境にあり政府がサウジアラビアなど湾岸各国に働きかけることを期待している。また米英政府にとっても兵器は重要な輸出品である。一方サウジアラビアは石油収入で潤っており大型兵器を買う余裕があり、またスルタン皇太子は長く国防相をつとめ軍備増強・兵器購入の旗振り役でもある。
 しかし現在は対テロ戦争の時代であり戦闘機など大型兵器は無用の長物である。またイスラエルがガザ地区から撤退するなど中東和平の機運が出ている。このような中でスルタン皇太子があえてサウジの空軍力を中東一に増強すると発言するのは、むしろ地域の緊張を増しサウジに対する近隣諸国の警戒感を高め、逆効果だと思われる。それでも皇太子が戦闘機購入の地ならしを目論むのは、サウド王制維持のために英国との絆を強める必要性を感じたからではなかろうか。
 もう一方の軍需産業大国である米国がどのように反応するか興味深い。


at 11:10Saudi Arabia  
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