2008年01月28日

グローバル化を目指すGCCの証券取引所(1)

(第1回)相次ぐ先進国との資本提携・協力協定の締結

(東京証券取引所)
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 年明け早々の1月17日、(株)東京証券取引所グループ(以下東証)は、中東産油国のアブダビ証券取引所(ADSE)と包括的な相互協力協定(MOU)を締結した。両者は今後金融商品の開発・上場等の分野で協力の可能性を模索し、アラブ首長国連邦と日本の両市場の発展に貢献することに合意した(東証の記者発表資料より)。

 記者発表の中で東証の斉藤社長は「中東に新たな友人を得たことをうれしく思い、MOUが両市場の発展をさらに促進することを期待する。」と述べている。MOU自体は精神論的なものにとどまっており、今後両者で具体的な内容を詰める意向のようである。

 昨年12月にアブダビのムハンマド皇太子が来日しており、今回の協定にはこれまで石油分野にとどまっていたアブダビと日本との関係をさらに広げようとする日本政府の意図がうかがわれる。折りしも世界の金融界では政府系ファンド(Sovereign Wealth Fund, SWF、別名:国富ファンド)が大きな話題となっており、モルガン・スタンレーが運用資産8,750億ドルと推定する世界最大のアブダビのSWFは注目の的である。東証とADSEの提携により、SWFを始めとするアブダビのオイルマネーが日本の株式市場に流れ込むのではないか、と市場関係者は期待を込めている。

 原油価格は一昨年から名目価格で史上最高値を更新し続けており、昨年末にはついにバレルあたり100ドルを超えた。この結果、産油国には大量のドルが雪崩れ込み、アブダビ、サウジアラビア、カタル、クウェイトなどGCC各国の株式市場は未曾有の活況を呈している。とは言えこれらの国々は石油以外の産業が未発達で、上場企業数や株式時価総額は先進国に比べると非常に小さい。例えば今回東証と提携したADSEの場合、昨年末の上場企業数は66社、時価総額は1,210億ドルであり、東証の時価総額4.2兆ドルとは比較にならない。

 しかし豊かなオイルマネーに裏打ちされたGCCの株式市場は飛躍的な成長を遂げており、世界の中で強い存在感を示しつつある。それは今回の東証・ADSEの提携に先立つ昨秋のドバイ及びカタル両国の証券取引所の動きに如実に表れている。ドバイ証取によるロンドン証券取引所(LSE)及び北欧証券取引所(OMX)の買収には米国のNASDAQも一枚加わり、これに対してカタルもLSE及びOMXの買収に乗り出し両者は激しいM&A合戦を演じた。こうして米国、欧州、中東と言う地球を半周する証券取引所の再編劇が始まろうとしている。

 証券取引所の合従連衡が今後東南アジア、極東を巻き込んだ地球規模になることは時間の問題であろう。証券取引所同士の買収という、まさに資本主義の究極のM&A時代の始まりである。極東では上海など中国の株式市場が日本を凌ぐ規模に成長しつつあり、インドは長い英国とのつながりの中で存在感を増している。東南アジアではシンガポールが多極化する世界経済の一極を維持しようと常に脱皮を繰り返している。そして同じ東南アジアのマレーシアは、台頭するイスラム金融のリーダーたらんとしてハード、ソフトの両面で資本市場の環境の整備を進めている。

 本稿の目的は、GCC6ヶ国の株式市場の現状を見ると共に、激動する国際資本市場の中でドバイ、カタル及びアブダビの各証券取引所の動きを概観することにある。

(第1回完)

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前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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at 10:59GCC  
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