2008年12月09日
MENAなんでもランキング・シリーズ その14
MENA(中東・北アフリカ)22カ国の「腐敗認識指数」(2008年版)
東はアフガニスタンから西はモーリタニアまでのMENA(中東・北アフリカ)22カ国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。
第14回のランキングは、汚職追放を目指す世界のNPO法人Transparency International(略称:TI、本部ベルリン)が毎年発表している「Corruption Perception Index(腐敗認識指数)」についてMENA諸国をとりあげて比較しました。
* ホームページ
TI本部: http://www.transparency.org/
日本支部: http://www.ti-j.org/
1.「Corruption Perception Index (腐敗認識指数)」について
Corruption Perception Index(CPI, 腐敗認識指数)は、公務員と政治家がどの程度腐敗していると認識されるか、その度合いを国際比較し、国別にランキングしたものである。ベルリンに本部のあるNPO法人Transparency International(TI)が手がけており、日本にはその支部「NPO法人トランスペアレンシー・ジャパン」がある。
CPIは1995年に第一回の指数を発表、今年で14回目である。調査当初は対象国が41カ国、調査内容も7種類と小規模であったため、各国からは調査結果に対する不満が出たが、回を重ねるに従い内容の信頼性も高まっており、例えば今年の調査対象国及び調査内容は180カ国、14種類へと年々増加している。
評価は各国の実業家或いは分析専門家など実務で腐敗の現場に直面している人々の経験や認識に基づくアンケートを統計処理したものであり、CPIは0から10までのスコアで国を採点している。0点は最も腐敗していると思われる国を、10点は最も腐敗していないと思われる国を指している。
2.MENA諸国のCPI指数と順位
(詳細は表「腐敗認識指数ランキング」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-14%20Corruption%20Perception%20Index%202006-08.htm参照)
MENA22カ国の中で最も腐敗度が低いと評価されたのはカタル(CPI指数6.5)である。同国の世界順位は28位でスペインと同レベルとみなされている。これに次ぐ第2位はイスラエル(CPI指数6.0)で世界順位33位である。以下世界の上位3分の1(60位以内)に位置しているのはUAE(CPI指数5.9、世界35位)、オマーン(同5.5、41位)、バハレーン(同5.4、43位)、ヨルダン(同5.1、47位)、トルコ(同4.6、58位)と続いている。これら7カ国のうちカタル、UAE、オマーンおよびバハレーンはGCC(湾岸協力会議)を構成する産油国であり、経済的に豊かであることが特徴である。
これに対してMENA諸国の中で腐敗度が高いとされているのは、スーダン(CPI指数1.6、MENA順位20位、世界順位173位)、アフガニスタン(同1.5、21位、176位)、イラク(同1.3、22位、178位)である。これら3カ国はMENA22カ国の中でも特にCPI指数が低く、また世界180カ国の中で最下位グループに位置している。CPIレポートは「貧困と腐敗の間には強い相関関係がある」と指摘しているが、カタルなどの上位国とスーダンなどの最下位国との経済的格差が腐敗度の格差として表れていることがわかる。
上位7カ国と下位3カ国との中間に位置している国は12カ国ある。8位から11位までは、チュニジア(CPI指数4.4、世界62位)、クウェイト(同4.3、65位)、モロッコ(同3.5、80位)、サウジアラビア(同3.5、80位)である。クウェイトおよびサウジアラビアはカタルなどと同じGCCの一員であり、財政が豊かな国であるが、他のGCC各国よりも腐敗度が高い。
12位から19位までは、アルジェリア(CPI指数3.2、世界92位)、レバノン(同3.0、102位)、エジプト(同2.8、115位)、モーリタニア(同2.8、115位)、リビア(同2.6、126位)、イラン(同2.3、141位)、イエメン(同2.3、141位)、シリア(同2.1、147位)と続いている。
ちなみに世界でCPI指数が最も高い国(即ち腐敗度が最も低いとされた国はデンマーク、ニュージーランドおよびスウェーデンである(CPI指数9.3)。日本はCPI指数7.3、世界で18位とされているが、これは米国と同じ順位である。また中国はCPI指数3.6、世界順位72位である。
3.過去3ヵ年(2006-08年)のCPI指数の変化
(詳細は表「腐敗認識指数ランキング」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-14%20Corruption%20Perception%20Index%202006-08.htm参照)
2006-08年のCPI指数の変化を見ると、指数が上昇傾向にある国、逆に下降傾向にある国、あるいは3ヵ年で指数が上下に変動している国など、各国にいろいろな特徴が見受けられる。指数が上昇傾向にある国、即ち公務員と政治家の腐敗度が改善されているとされる国は、今年度MENA1位、世界28位となったカタルがあげられるが、特にトルコは3.8(06年CPI指数)→4.1(同07年)→4.6(同08年)と改善の度合いが目覚しい。その他サウジアラビア(3.3→3.4→3.5)も年々良くなっている。
一方、3ヵ年連続して指数が低下している国としてはエジプト3.3(06年CPI指数)→2.9(同07年)→2.8(同08年)のほか、イラン(2.7→2.5→2.3)、シリア(2.9→2.4→2.1)、スーダン(2.0→1.8→1.6)、イラク(1.9→1.5→1.3)などがある。またオマーン(5.4→4.7→5.5)およびバハレーン(5.7→5.0→5.4)のようにCPI指数の変動が激しい国もいくつか見受けられる。
CPI指数が上昇した国に比べ、指数が低下した国が多く、また指数の変動が激しい国も少なくないことから、過去3ヵ年で見る限りMENA地域の腐敗度はむしろ悪化したと言える。腐敗と貧困の間に強い相関関係があるとされ、またその背景にイラクやスーダンのように治安の悪化という政治的要因がある。MENA地域全般で腐敗と貧困と治安の悪化という負の連鎖を断ち切ることが求められている。
以上
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp
東はアフガニスタンから西はモーリタニアまでのMENA(中東・北アフリカ)22カ国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。
第14回のランキングは、汚職追放を目指す世界のNPO法人Transparency International(略称:TI、本部ベルリン)が毎年発表している「Corruption Perception Index(腐敗認識指数)」についてMENA諸国をとりあげて比較しました。
* ホームページ
TI本部: http://www.transparency.org/
日本支部: http://www.ti-j.org/
1.「Corruption Perception Index (腐敗認識指数)」について
Corruption Perception Index(CPI, 腐敗認識指数)は、公務員と政治家がどの程度腐敗していると認識されるか、その度合いを国際比較し、国別にランキングしたものである。ベルリンに本部のあるNPO法人Transparency International(TI)が手がけており、日本にはその支部「NPO法人トランスペアレンシー・ジャパン」がある。
CPIは1995年に第一回の指数を発表、今年で14回目である。調査当初は対象国が41カ国、調査内容も7種類と小規模であったため、各国からは調査結果に対する不満が出たが、回を重ねるに従い内容の信頼性も高まっており、例えば今年の調査対象国及び調査内容は180カ国、14種類へと年々増加している。
評価は各国の実業家或いは分析専門家など実務で腐敗の現場に直面している人々の経験や認識に基づくアンケートを統計処理したものであり、CPIは0から10までのスコアで国を採点している。0点は最も腐敗していると思われる国を、10点は最も腐敗していないと思われる国を指している。
2.MENA諸国のCPI指数と順位
(詳細は表「腐敗認識指数ランキング」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-14%20Corruption%20Perception%20Index%202006-08.htm参照)
MENA22カ国の中で最も腐敗度が低いと評価されたのはカタル(CPI指数6.5)である。同国の世界順位は28位でスペインと同レベルとみなされている。これに次ぐ第2位はイスラエル(CPI指数6.0)で世界順位33位である。以下世界の上位3分の1(60位以内)に位置しているのはUAE(CPI指数5.9、世界35位)、オマーン(同5.5、41位)、バハレーン(同5.4、43位)、ヨルダン(同5.1、47位)、トルコ(同4.6、58位)と続いている。これら7カ国のうちカタル、UAE、オマーンおよびバハレーンはGCC(湾岸協力会議)を構成する産油国であり、経済的に豊かであることが特徴である。
これに対してMENA諸国の中で腐敗度が高いとされているのは、スーダン(CPI指数1.6、MENA順位20位、世界順位173位)、アフガニスタン(同1.5、21位、176位)、イラク(同1.3、22位、178位)である。これら3カ国はMENA22カ国の中でも特にCPI指数が低く、また世界180カ国の中で最下位グループに位置している。CPIレポートは「貧困と腐敗の間には強い相関関係がある」と指摘しているが、カタルなどの上位国とスーダンなどの最下位国との経済的格差が腐敗度の格差として表れていることがわかる。
上位7カ国と下位3カ国との中間に位置している国は12カ国ある。8位から11位までは、チュニジア(CPI指数4.4、世界62位)、クウェイト(同4.3、65位)、モロッコ(同3.5、80位)、サウジアラビア(同3.5、80位)である。クウェイトおよびサウジアラビアはカタルなどと同じGCCの一員であり、財政が豊かな国であるが、他のGCC各国よりも腐敗度が高い。
12位から19位までは、アルジェリア(CPI指数3.2、世界92位)、レバノン(同3.0、102位)、エジプト(同2.8、115位)、モーリタニア(同2.8、115位)、リビア(同2.6、126位)、イラン(同2.3、141位)、イエメン(同2.3、141位)、シリア(同2.1、147位)と続いている。
ちなみに世界でCPI指数が最も高い国(即ち腐敗度が最も低いとされた国はデンマーク、ニュージーランドおよびスウェーデンである(CPI指数9.3)。日本はCPI指数7.3、世界で18位とされているが、これは米国と同じ順位である。また中国はCPI指数3.6、世界順位72位である。
3.過去3ヵ年(2006-08年)のCPI指数の変化
(詳細は表「腐敗認識指数ランキング」http://menadatabase.hp.infoseek.co.jp/5-14%20Corruption%20Perception%20Index%202006-08.htm参照)
2006-08年のCPI指数の変化を見ると、指数が上昇傾向にある国、逆に下降傾向にある国、あるいは3ヵ年で指数が上下に変動している国など、各国にいろいろな特徴が見受けられる。指数が上昇傾向にある国、即ち公務員と政治家の腐敗度が改善されているとされる国は、今年度MENA1位、世界28位となったカタルがあげられるが、特にトルコは3.8(06年CPI指数)→4.1(同07年)→4.6(同08年)と改善の度合いが目覚しい。その他サウジアラビア(3.3→3.4→3.5)も年々良くなっている。
一方、3ヵ年連続して指数が低下している国としてはエジプト3.3(06年CPI指数)→2.9(同07年)→2.8(同08年)のほか、イラン(2.7→2.5→2.3)、シリア(2.9→2.4→2.1)、スーダン(2.0→1.8→1.6)、イラク(1.9→1.5→1.3)などがある。またオマーン(5.4→4.7→5.5)およびバハレーン(5.7→5.0→5.4)のようにCPI指数の変動が激しい国もいくつか見受けられる。
CPI指数が上昇した国に比べ、指数が低下した国が多く、また指数の変動が激しい国も少なくないことから、過去3ヵ年で見る限りMENA地域の腐敗度はむしろ悪化したと言える。腐敗と貧困の間に強い相関関係があるとされ、またその背景にイラクやスーダンのように治安の悪化という政治的要因がある。MENA地域全般で腐敗と貧困と治安の悪化という負の連鎖を断ち切ることが求められている。
以上
本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。
前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
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