2010年11月22日

迫るサウド家の世代交代(上)

(注)本レポートは「マイライブラリーに一括掲載されています。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0162SaudRoyalFamily2010.pdf

1.国王、脊椎痛治療のため米国へ
 イスラム最大の行事でありサウジアラビアにとって最も重要な宗教行事であるハジ(マッカ巡礼)が最高潮に達した11月12日の金曜日、リヤドのRoyal Court(王宮府)から「アブダッラー国王が腰痛治療のため入院する」との突然の発表があった 。既に7月頃から国王の執務ペースがダウンしており、サルコジ仏大統領との会談が二度にわたって延期されるなど、その健康状態が懸念されていた 。その週の閣議は第二副首相のナイフ内相が首相である国王に代わって取り仕切っており(第一副首相のスルタンもモロッコで静養のため不在ー後述)、また国王恒例のマッカ視察もナイフが代行した。国王の病状は生命にかかわるようなものではなく、数日後のイード(ハジ明け)祝日には、王宮で来訪客と歓談する国王の様子が写真入りで報道された 。しかし客人に対して、立ったまま挨拶を受けることができず申し訳ない、と述べたとも伝えられ 、19日に国王は再度入院を余儀なくされた 。

 そのわずか2日後の昨日(日曜日)、今度は国営通信SPAが、治療のため国王が今日(22日)米国へ向かうと発表、同時にモロッコで静養中であったスルタン皇太子が日曜日に帰国したことを伝えた 。種々の報道を総合すると、脊椎の椎間板に滞留した凝固血液により国王は激しい痛みを覚えるようである。 アブダッラー国王の米国での治療期間がどの程度になるか今のところ不明である。その間の国政はスルタン皇太子及びナイフ第二副首相が代行することになるが、後述するように両名とも病歴があり、特に皇太子は昨年1年近く米国で治療し(病名は発表されていないが癌説が流れている )、年末に帰国後もメディアに顔を出すことが少なく、静養と称して8月以来3カ月以上モロッコのアガディールに滞在中だった。彼は自分が管轄する航空国防省のジェッダ空港拡張工事契約を滞在先のモロッコで署名するなど、執務に支障のない程度に健康を回復したようであるが、もし今回のことがなければまだ当分の間は帰国しなかったのではないかと思われる。

サウジアラビアの王位はこれまでいずれも国王の死去に伴って皇太子が新国王に即位しており、健康不安による生前退位と言う前例が無い。従って当面は現体制のまま執務は比較的健康なナイフ第二副首相を中心に行われることになろう。しかし1923年生まれ(1924年説もある)の国王は今年87歳の高齢であり、政権交代の時期が迫っていることは間違いない。

2.皇太子ほかの王族閣僚にも健康不安
 皇太子であるスルタンは癌の疑いがあると言われ(上述)、アブダッラー以上の健康問題を抱えている。彼の年齢は公式には79歳とされているが 、実際は国王より数歳若いだけの80台半ばと見られる。彼は一昨年末にニューヨークで手術を受け、帰国したのはほぼ1年後の昨年末であった 。帰国後も病状に改善は見られず、8月に静養の為モロッコに出国したことは上に述べた通りである。

 今年77歳になるナイフ第二副首相兼内相は現在王族閣僚の中では比較的健康であり、国内のアル・カイダ系テロ組織摘発に辣腕をふるっているが、やはり昨年治療を受けたと伝えられている(病名不詳) 。またスルタン、ナイフの同母弟で俗に「スデイリ・セブン(スデイリ妃の7人の息子達)」の一人であるサルマン・リヤド州知事(73歳)は8月に米国で手術を受け、その後国外で療養中であった。ここ数年リヤド州の実務は副知事のサッターム王子が代行していたが、事態が急変したため今回急遽帰国したようである。

さらにサウド外相も健康に不安を抱え昨年9月に脊椎の手術を受けている 。サウド外相は第三代ファイサル国王の子息であり、国王、皇太子等の第二世代に対していわゆるアブドルアジズ初代国王の孫である第三世代に属する。しかし第三世代とは言え彼自身既に69歳であり決して若いとは言えない。このように現在権力の中枢にいるサウド家の王子たちはいずれも高齢に加え健康に問題がある。王位継承問題が現実の問題となる日が近づいていることは間違いないようである。
(図「アブドルアジズ初代国王の王妃とその子息たち」http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-1-3bSonsOfAbdulazizByWife.pdf 参照)

(続く)

3.権力の世襲を進める第二世代
4.予測される当面の動き

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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drecom_ocin_japan at 13:43コメント(0)トラックバック(0)Saudi Arabia  

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