2011年05月30日

MENA(中東・北アフリカ)22カ国の平和指数(2011年版)(下)

(注)「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0182MenaRank12.pdf

(MENAなんでもランキング・シリーズ その12)

3.2010年と2011年の比較
(詳細はhttp://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/5-12aGlobalPeaceIndex(Table).pdf 参照)
 2010年と2011年の順位を比較するとMENAの世界平均順位は2010年の79位から9ランク下がり2011年には88位となっている。調査対象国の数が149カ国から153カ国に増えているため単純には比較できないが、MENA地域の平和度が下がっていることは間違いない。国別で見ると順位を上げた国が5カ国に対し逆に16カ国は順位を下げている(1国は順位に変動なし)。


 MENAの多くの国で平和度が下がったのは、昨年末から燃え広がった民主化革命の嵐(いわゆる「アラブの春」)により、地域全体が不安定化したためである。順位を大きく下げたのはリビア、バーレーンであり、リビアは前年の世界56位から今年は143位へと一気に87位も下げており、バーレーンも70位から123位に転落している。このほかエジプトは49位→73位、オマーンも23位→41位に下がっている。オマーンの場合、昨年はカタールに次いでMENAでは2番目に平和度が高かったが、今年はMENA4位に下がっている。


 この他順位を下げたのはチュニジア(世界37位→44位)、シリア(同115位→116位)、イラン(同104位→119位)、トルコ(同126位→127位)、アルジェリア(同116位→129位)、モーリタニア(同123位→130位)、レバノン(同134位→137位)、イエメン(同129位→138位)、イスラエル(同144位→145位)、アフガニスタン(同147位→150位)、スーダン(同146位→151位)、イラク(同149位→152位)の各国である。なお調査対象国が昨年の149カ国から4カ国増えているため、シリア、トルコ、レバノンのように順位の下落が小幅にとどまっている国は実質的に前年度の横ばいと見ることができる。またイスラエル、アフガニスタン、スーダン及びイラクなど平和度が世界最低ランクの各国の名目上の順位が下がっているのも同じような理由である。


 これに対して順位を上げたのはカタール((世界15位→12位)、クウェイト(同39位→29位)、UAE(同44位→33位)、ヨルダン(同68位→64位)及びサウジアラビア(同107位→101位)の5カ国であり、ヨルダンを除く4カ国はGCCの産油国である。このように産油国の平和度が前年よりアップしたのは石油価格の高騰により各国の財政が好調であったことと無縁ではないであろう。これらの国は豊かな石油収入により国家が食料・医療・教育などの全部または一部を負担し、或いは一般国民の雇用を確保することにより国民の不満を和らげることができるからである。これは一般に「レンティア(金利生活者の)国家」と呼ばれている。


4.2008年~2011年の世界順位の推移
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/5-12bGpiByMajorCountries(Graph).pdf 参照)
 ここではMENA7か国(カタール、エジプト、サウジアラビア、シリア、バーレーン、イエメン、リビア)及びMENA平均の2008年から2011年までの順位の変動を見てみよう(注、4カ年間に調査対象国数は140カ国→144か国→149か国→153か国に増加している)。
 
 MENAの平均世界順位は2008年の81位から09年に76位に上がったが、その後昨年今年と2年連続で79位、88位に下がっている。カタールの場合、4年前の2008年には世界33位であったが、その後16位(‘09年)、15位(‘10年)と毎年順位を上げ今回は世界のベストテンにあと一歩の12位となっている。カタールのように4年間連続で順位を上げた国は他にない。


 エジプトは昨年までは69位(‘08年)→54位(‘09年)→49位(’10年)と順位を上げてきたが今回は73位に急落している。同国は今年2月にムバラク大統領が退陣し「アラブの春」と呼ばれる民主革命が実現したものの政情が安定したとは言えない。このため今年の順位が大幅に下がっている。このことはリビアでさらに顕著に表われ、同国は昨年まで61位(‘08年)→46位(‘09年)→56位(’10年)と世界でも中の上クラスに位置し、またMENA22カ国の中では6位前後であった。しかし今年になりカダフィ政権(トリポリ)と反カダフィ臨時政権(ベンガジ)が対立し内戦状態に陥ったため平和指数も143位に転落している。


 バーレーンもスンニ派の政府支配勢力と国民の多数を占めるシーア派の対立が今年に入って一気に表面化した。昨年まで同国の世界順位は74位(‘08年)→69位(‘09年)→70位(’10年)と比較的安定していたが今年は123位に急落した。また反政府デモが頻発しているシリアは75位(‘08年)→92位(‘09年)→115位(’10年)→116位(‘11年)と4年連続で順位が下がっており、イエメンも同様に106位(‘08年)→119位(‘09年)→129位(’10年)→138位(‘11年)と4年連続で順位を下げている。


以上


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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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drecom_ocin_japan at 10:59コメント(0)トラックバック(0) 

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