2011年08月28日

リビアの石油はどうなる?そして外国の勝ち組と負け組は?(上)

(注)本レポートは「前田高行論稿集 マイ・ライブラリ」で上下一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0196Libya.pdf

1.はじめに
 40年以上にわたって北アフリカの産油国リビアを独裁支配してきたカダフィ政権が崩壊しつつある。昨年末に隣国チュニジアで発生し瞬く間にアラブ諸国を席巻したいわゆる「アラブの春」と呼ばれる一連の政変はリビアにも波及した。今年2月以降は首都トリポリの政権側と東部ベンガジに本拠を置く反政権側の「国民評議会(TNC)」との間で激しい内戦を繰り広げたが、英仏を主力とするNATO軍による空爆に支えられた反政権側が6カ月の戦闘の後ほぼ勝利を手中にした。これによって内戦前の160万B/Dから10万B/Dにまで落ち込んでいた石油生産の回復が期待されている。


 巷間では石油の生産・積出設備は大きな損傷を受けておらず政情が安定すれば生産回復は案外早いのではないかと言われている。但しロイターによる専門家アンケート調査では生産量が100万B/Dを回復するには今後1年かかり、内戦前の水準に達するには2年近くかかると言うのが多数意見のようである 。リビアはこれまでも石油(あるいは天然ガス)の開発・生産技術を外国企業に頼ってきたが、今後石油生産を回復し、或いは更なる増産を目指すためには外国の国際石油企業の協力が不可欠である。


2.リビアの石油資源と経済の現状
 BPの統計資料「Statistical Review of World Energy, 2011」によれば、2010年末の同国の石油確認埋蔵量は464億バレルである 。世界1位のサウジアラビア(2,646億バレル)の6分の1であるが、ロシアに次いで世界第8位でありアフリカではトップの埋蔵量を誇っている。同じ年の生産量は166万B/Dでここでは世界18位である(世界一はロシアの1,027万B/D)。埋蔵量を生産量で割った「可採年数」は世界平均の46年を上回る77年であり、同国は世界有数の産油国であると同時に今後の増産に大きな期待を持てることがわかる。


 リビアは面積が176万平方キロメートルと日本の4.6倍の広さであるが国土の大半は砂漠であり人口もわずか6百万人強にすぎない(外務省ホームページより)。同国のマクロ経済をOPECの資料「OPEC Annual Statistical Bulletin, 2010」で見ると、GDP総額は742億ドル、1人当たりGDPは11,300ドルである。これはUAE、クウェイト、カタールなど人口の少ない湾岸産油国に比べてかなり低いが、サウジアラビア(17,000ドル)と肩を並べる水準である。


 輸出は総額463億ドルのうち9割以上を石油と天然ガスが占めており、典型的な天然資源依存型のモノカルチャー経済である。石油と天然ガスは主として欧州に輸出され、見返りに食料品、消費財など生活物資の大半を輸入に頼っており、国内にはめぼしい産業が殆どない。よく引き合いに出されるのが国内初のチョコレート製造工場の話である。工場の完成式にカダフィから招待された外国人記者団が目にしたのは、スイスから輸入された完成品チョコレートが「Made in Libya」と印刷された包装紙で仕上げられていたというものである 。


 豊かな石油収入に支えられ同国は毎年多額の経常黒字を計上しており、資産として蓄えられた余剰資金は1,500億ドルに達すると推定される 。これら資産の一部はReserve Fund(政府系ファンド, SWF)として運用されている。


(続く)


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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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drecom_ocin_japan at 17:29コメント(0)トラックバック(0) 

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