2012年05月01日

石油の海に溺れるクウェイト(7)

(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」で一括ご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0225KuwaitCrisis.pdf


9.クウェイトに対する世界の評価
 クウェイトは格付け会社の高い評価が示す通り国際金融機関の信用度は高い。しかし前章でふれたように内外のビジネスマンからは信用されていないように見受けられる。クウェイトは世界で一般的にどのように評価されているのであろうか?


 国連を始め各種調査機関による数多くのランク付けが発表されているが、ここではその中から社会環境及びビジネス環境に関するそれぞれ5つの国際評価ランクを取り上げてクウェイトがどの程度のランクに位置しているかを見てみよう。ここで取り上げたランクは以下のとおりである(カッコ内は評価機関と評価年)。


[社会環境に関する国際ランク]
(1) 人間開発指数Human Development Index (UNCTAD国連開発会議、2011年)
(2) 世界平和指数Global Peace Index (Economic Intelligence Unit, EIU、2011年)
(3) 腐敗認識指数Corruption Perception Index (Transparency International、2011年)
(4) 男女格差The Global Gender Gap Report (The World Economic Forum, WEF、2010年)
(5) 報道の自由度Press Freedom Index (Reporters Without Borders、2012年)


[ビジネス環境に関する国際ランク]
(6) ビジネス環境Ease of Doing Business (World Bank、2012年)
(7) 世界競争力World Competitiveness Report (World Economic Forum, WEF、2011-12年)
(8) 情報通信技術開発指数Information & Communication Technologies Development Index (国際電気通信連合ITU、2009年)
(9) 貿易円滑化指数The Enabling Trade Index (World Economic Forum, WEF、2010年)
(10) 旅行・観光産業競争力指数(Travel and Tourism Competitiveness Index (World Economic Forum, WEF、2011年)


[社会環境に関する国際ランク]
(1) 人間開発指数
 人間開発指数は三つの基本的な側面―健康で長生きできるかどうか、知識を得る機会があるかどうか、人間らしい生活を送れるかどうかーについて、進歩の度合を長期にわたって測定するための総合的な指標としてUNCTAD(国連開発会議)が作成したものである。
 クウェイトの指数は0.760であり、世界187カ国中の63位である。クウェイトは日本(12位)に比べてかなり低いが中国の101位よりは上位である。GCC6カ国の中ではUAE(30位)、カタール(37位)、バハレーン(42位)、サウジアラビア(世界56位)より劣っている。


(2) 世界平和指数
 平和指数は小型破壊兵器(銃、小型爆発物など)の入手の容易さ、国防費、汚職、人権に対する尊重の度合いなど24項目をベースに世界153カ国をランク付けしたものである。
 クウェイトは世界ランク29位でカタール(12位)より低いが、UAE(33位)より高く、サウジアラビア(101位)、バハレーン(123位)よりはかなり高い。また中国(80位)、米国(82位)よりもランクは高く、世界的に見ても平和な国家と評価されている。


(3) 腐敗認識指数
 腐敗認識指数の2011年版は世界183カ国を対象に公務員と政治家がどの程度腐敗しているかを国際評価したものである。
 クウェイトは世界54位で比較的ランクは高い。他のGCC各国もカタール(22位)、UAE(28位)、バハレーン(46位)、オマーン(50位)、サウジアラビア(57位)といずれも世界的には高いランクである。この指数を公表しているTransparency Internationalはベルリンに本部のあるNPO法人であるが、湾岸産油国のような豊かな専制君主制国家を腐敗度の低い国家と評価しているのは興味ある事実と言えよう。


(4) 男女格差
 これは世界経済フォーラム(WEF)が発表した「男女格差報告2010年版」によるものであるが、WEFは世界134カ国を対象に経済、教育、健康、政治の4つの分野について男女間の格差を指数化して順位づけている。
 クウェイトは世界105位でありかなり評価が低い。但し他のGCC諸国もUAE(103位)、バハレーン(110位)、カタール(117位)、オマーン(122位)、サウジアラビア(129位)といずれも100位以下であり、クウェイトだけが特に悪い訳ではない。因みに日本は94位でありクウェイトよりわずかに上位である。


(5) 報道の自由度
 ジャーナリストのNGO団体「国境なきレポーター」が発表したものであり、2012年版では世界179カ国が評価の対象となっている。
 クウェイトは世界78位であり、179カ国のほぼ中間にランクされている。その他のGCC各国はいずれも100位以下であり、特にバハレーンは最下位に近い173位である。このようにクウェイトがGCC諸国の中では特に報道の自由度が高いとされているのは注目に値する。


(続く)


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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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drecom_ocin_japan at 08:35コメント(0)トラックバック(0) 

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