2013年01月25日
MENA(中東・北アフリカ)諸国のソブリン格付け(2013年1月現在)(2)
(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0254SovereignRating.pdf
(カタール、クウェイト、アブ・ダビの格付けは日本よりワンランク上!)
3.MENA諸国とその他主要各国の格付け比較(S&Pの場合)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/19-T02.pdf 参照)
S&Pが格付けしているMENA諸国は以下の13カ国である。
バハレーン、エジプト、イスラエル、ヨルダン、クウェイト、レバノン、モロッコ、オマーン、カタール、サウジアラビア、チュニジア、 トルコ及びUAE(但しアブ・ダビ)
これら13カ国と世界の主要国を比較すると、MENAで最も高い格付けを得ているのはカタール、クウェイト及びアブ・ダビのAAである。格付けAAはAAA、AA+に次いで3番目に高い。世界の国では英国、ドイツ、オランダ、スイス、などのヨーロッパ諸国が最高ランクのAAAに格付けされており、非ヨーロッパ諸国ではオーストラリア、シンガポール、香港もAAAである。そしてAAAに次ぐAA+には米国及びフランスが格付けされており、ベルギーがMENA最高位のカタール、クウェイト、アブ・ダビと同じランクである。
MENAでこれら3カ国に次ぐのはサウジアラビア(AA-)であり、これは日本、中国、台湾と同格である。イスラエルはA+であり韓国と同格である。そしてオマーンの格付けがイスラエルに次ぐAとされている。
オマーンの次に格付けが良いのはバハレーン(BBB)及びモロッコ(BBB-)であるが、S&Pの格付け定義でBBBは「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」とされ、AAAを頂点とする投資適格ランクでは最も低く、これ以上ランクが低下すると「投資不適格」とみなされる。世界ではロシア、ブラジル、南アフリカ等がバハレーンと同じBBBであり、スペイン或いはインドがモロッコと同じく投資適格の最低ランクBBB-である。
上記以外のMENA5カ国(トルコ、ヨルダン、チュニジア、レバノン及びエジプト)の格付けは投資不適格とされている。そのうちトルコ、ヨルダン、チュニジアの3カ国の格付けはBBでありポルトガル、インドネシア、フィリピン(共にBB+)とほぼ同じである。残るレバノンとエジプトの格付けはそれぞれB、B-であり、エジプトの場合はギリシャと同じ格付けである。格付けBの定義は「現時点では債務を履行する能力を有しているが、BBに格付けされた発行体よりも脆弱である。事業環境、財務状況、または経済状況が 悪化した場合には債務を履行する能力や意思が損なわれ易い」とされている。
ギリシャは一時期格付けが最も低いCにまで落ちたが、ECB(欧州中央銀行)の融資でB-まで戻り一息ついているところである。同じ格付けのエジプトはIMF融資がなかなか実行されないまま財政がじりじりと悪化し、それにつれて格付けも急激に落ちている。現在、同国はカタールの緊急融資をうけて当座をしのいでいるものの先行きは予断を許さない状況である。
(完)
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