2015年04月08日

2050年にはキリスト教徒に肩を並べるムスリム人口―Pew Research Centerレポート(1)

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0339WorldMuslimPopulation2015.pdf

 本稿は米国ワシントンに本部があり、宗教人口統計で定評のあるPew Research Center(PEW)が最近発表した「The Future of World Religions: Population Growth Projections, 2010-2050」(*)の概要である。本レポートは2010年におけるキリスト教徒、イスラム教徒(ムスリム)、仏教徒などの宗教人口の世界各国・地域別分布状況を示すとともに、2020年、2030年、2040年および2050年についても同様の推定値を示したものである。ここでは世界の宗教別人口構成のほかムスリムの地域別および国別の信者数について分析した 。
URL:http://www.pewforum.org/2015/04/02/religious-projections-2010-2050/


1.2010年の世界の宗教別人口
(1)全世界の宗教別人口
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-I-2-G011.pdf参照)
 PEWでは2010年の世界人口を69億人と推計しているが、宗教別に見ると、最も多いのがキリスト教徒の22億人で全人口の31%を占めている。これに次いで多いのがムスリムの16億人で23%である。つまり世界人口の3人に1人がキリスト教徒、4人に1人がムスリムと言うことになる。因みに両者以外ではヒンズー教徒が15%、仏教徒は7%である。


(2)地域別ムスリム人口
 世界16億人のムスリムの地域別分布を見ると、最も多いのはアジア・大洋州であり全世界のムスリムの62%、10億人弱が居住している。次項の国別ムスリム人口で述べるとおりこの地域にはインドネシア、インド、パキスタン、バングラデシュなどムスリム人口が1億人を超す国があり、また中国の西域や中央アジア各国にも多くのムスリムが住んでいる。


 アジア・大洋州に次いでムスリムが多いのは中東・北アフリカ地域であり、同地域のムスリムは3.2億人、全イスラムに占める割合は20%である。アフリカのサブ・サハラもナイジェリア、ニジェール、マリなどに約2.5億人(16%)のムスリムが住んでいる。これら3地域を合わせると全ムスリムの97%に達する。残る3%は欧州に居住しており、北米・中南米のムスリム人口はごくわずかである。


(3)国別ムスリム人口
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-I-2-T031.pdf参照)
  国別のムスリム人口を見るとムスリムが1億人以上の国はインドネシア、インド、パキスタン、バングラデシュの4カ国である。インドネシアは世界最大のムスリムを抱え、その数は2億9百万人であり、総人口2億4千万人の87%を占めている。インドネシアに次いでムスリムが多いのはインドの1.8億人であるが、同国はヒンズー教徒が多数を占めており、全人口のムスリム比率は14%に過ぎない。パキスタン及びバングラデシュのムスリム人口は各々1.7億人、1.3億人であり、それぞれの総人口に占める比率は96%及び90%である。ムスリムの比率ではパキスタン、バングラデシュ両国はインドネシアよりも高い。


 上記4カ国に続いてナイジェリア(7,730万人)、エジプト(7,700万人)、イラン(7,360万人)及びトルコ(7,130万人)が七千万人台で並んでいる。このうちナイジェリアは総人口に占めるムスリムの比率は49%であるが、他の3カ国は95%以上がムスリムである。


 上記8カ国の他ムスリムが三千万人以上の国はアルジェリア、モロッコ、イラク、アフガニスタンおよびスーダンの5か国である。以上13か国に次いでムスリム人口が多いのはエチオピア、ウズベキスタン、サウジアラビアと続いている。これらの国の多くはイスラムを国教としており、またイスラム協力機構(OIC、旧称イスラム諸国会議機構)のメンバーである。


 しかし非イスラム国とされる中国とロシアにも多くのムスリムが住んでいる。中国のムスリム人口は2,500万人でありサウジアラビアに次いで多いが総人口に占める比率は1.8%にとどまっている。ロシアは旧ソ連邦時代の中央アジア諸国が独立した今も総人口の一割を占める1,430万人のムスリムを抱えている。なおロシアはOICのオブザーバーメンバーである。


 よく知られる通り欧米諸国にも多数のムスリムが居住しており、例えばドイツ及びフランスは各470万強のムスリムを抱え、人口総数に占める割合はそれぞれ5.8%および7.5%に達する。両国に比べムスリム人口は少ないものの英国には300万人、また米国にも280万人のムスリムがいるとされ、またイタリアに220万人、スペインにも100万人のムスリムがいる。


 中東地域のイスラム諸国と鋭く対立しているイスラエルはユダヤ人の国とみなされているが、パレスチナ・アラブ人のムスリムが140万人おり、同国の全人口の19%を占めている。ムスリムの人口増加率は非ムスリムのそれを大きく上回っており今後同国のムスリム人口は増加し、また総人口に占める比率も上昇するとみられる(後述)。なおPEWは日本のムスリムは20万人 (総人口に占め比率0.2%) と推定している。


(続く)


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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp



drecom_ocin_japan at 20:48コメント(0)トラックバック(0) 

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