2015年11月19日
MENA(中東・北アフリカ) 諸国の「世界競争力ランキング」(2015-2016年版)(7完)
(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0361MenaRank15.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その15)
5.主要国の分野別競争力(レーダーチャート)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/15-G02.pdf 参照)
MENAの主要5カ国(エジプト、トルコ、サウジアラビア、イスラエル及びUAE)と日本、米国、中国の分野別競争力を比較してみる。ここではこれら7か国を総合世界ランクが近い国同士で3つのグループに分け、レーダーチャート図によって各国の競争力の特徴を比較検討する。
レーダーチャート図は最も外側が世界順位1位であり内側の中心は世界151位である。また最上段の総合順位以下時計周りの1から12の数字は各分野を示している。各分野の世界順位を結ぶ輪が各国の状況である。レーダーチャートの輪が外側に広がっているほど世界での順位が高く、また輪の形が円に近いほど各分野で平均した競争力があることを示している。
(1)UAEと米国、日本の比較
まず米国(総合世界3位)、日本(同6位)とUAE(同17位)を比較すると、米国は「3.マクロ経済環境」が大きく落ち込んでいるが(世界96位)、6項目は世界のベスト・テンに入っており、3項目がベスト20位である。これに対して日本は米国同様「3.マクロ経済環境」が大きく落ち込み世界121位にとどまっているが、「2.インフラ」など5項目が世界のベスト・テンに入り、その他の4項目も世界20位以内に入っており平均した競争力を持っていることを示している。
MENAで2位、世界17位のUAEは「1.制度機構」、「2.インフラ」、「5.高等教育及び訓練」の3項目が世界10位以内であり米国とそん色がない。さらにすべての項目が世界40位以内であり全体としては均衡のとれた競争力を示している。
(2)サウジアラビア、イスラエルと中国の比較
次にサウジアラビアイスラエル及び中国を比べると総合順位はそれぞれ25位、27位、28位であり非常に近接している。サウジアラビアは「3.マクロ経済環境」が世界4位と非常に評価が高い。その他の項目では世界30~40位台が多く、最も悪いのは「7.労働市場効率」の世界60位である。
中国がサウジアラビアを上回っているのは「4.保健及び初等教育」、「7.労働市場効率」及び「10.市場規模」の3項目だけであり、その他の9項目はサウジアラビアが中国を上回っている。市場規模の格差については説明するまでもないが、労働市場効率に関しては、サウジアラビアでは宗教上の制約により女性の就労率が低いため市場効率が悪いとされているのである。一方、サウジアラビアは「1.制度機構」では世界24位で中国(51位)を上回り、また「5.高等教育及び訓練」では49位対68位、「9.技術的即応性」は42位対74位などサウジアラビアが中国より優れている項目がある。
イスラエルは両国の中間にあり、世界3位の「12.イノベーション」以外の項目の多くは世界40~50位台である。
(3)トルコとエジプトの比較
トルコとエジプトは共に人口7千~8千万人を有するMENAの大国である。両国の総合ランクはトルコ51位、エジプト116位と大きな格差がある。トルコは「7.労働市場効率」が世界127位と極めて低いが、その他のほとんどの項目は60位前後で世界の上位グループに入っている。これに対してエジプトは12項目中の6項目が世界100位以下、その他4項目も90位前後に低迷しており、「10.市場規模」だけが世界上位の24位である(同項目のトルコの順位は16位)。エジプトは人口規模のみが競争力として評価され、その他の項目は極めて低いのに対しトルコは新興工業国として種々の側面で競争力が評価されていると考えられる。
(完)
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