2016年05月18日
油価急落で中東からの輸入額が急減―MENA(中東・北アフリカ)の対日貿易(2015年版)(1)
(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0378MenaRank10.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その10)
中東北アフリカ諸国は英語のMiddle East & North Africaの頭文字をとってMENAと呼ばれています。MENA各国をいろいろなデータで比較しようと言うのがこの「MENAなんでもランキング・シリーズ」です。「MENA」は日頃なじみの薄い言葉ですが、国ごとの比較を通してその実態を理解していただければ幸いです。なおMENAの対象国は文献によって多少異なりますが、本シリーズでは下記の19の国と1機関(パレスチナ)を取り扱います。(アルファベット順)
アルジェリア、バハレーン、エジプト、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェイト、レバノン、リビア、モロッコ、オマーン、パレスチナ自治政府、カタール、サウジアラビア、シリア、チュニジア、 トルコ、UAE(アラブ首長国連邦)、イエメン、
これら19カ国・1機関をおおまかに分類すると、宗教的にはイスラエル(ユダヤ教)を除き、他は全てイスラム教国家でありOIC(イスラム諸国会議機構)加盟国です。なおその中でイラン、イラクはシーア派が政権政党ですが、その他の多くはスンニ派の政権国家です。また民族的にはイスラエル(ユダヤ人)、イラン(ペルシャ人)、トルコ(トルコ人)以外の国々はアラブ人の国家であり、それらの国々はアラブ連盟(Arab League)に加盟しています。つまりMENAはイスラム教スンニ派でアラブ民族の国家が多数を占める国家群と言えます。
第10回のランキングは、財務省ホームページの貿易統計により2015年の各国と日本の輸出入を比較しました。
*財務省ホームページ:http://www.customs.go.jp/toukei/info/tsdl.htm
1.総論:2015年の日本の貿易額
(大幅に改善された貿易バランス)
(1)全世界、MENA、GCCとの輸出入および貿易バランス
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/10-T01.pdf参照)
2015年の日本の輸出額は76兆円、輸入は78兆円で輸出入合計(以下貿易)額は154兆円に達した。輸出入のバランスは3兆円の貿易赤字となっている。前年の貿易赤字は13兆円であり、貿易収支は大幅に改善されている。
MENAと日本の貿易額は輸出3.7兆円、輸入9.8兆円で差し引き6.2兆円の大幅赤字である。日本の輸出全体に占めるMENA向け輸出は5%弱であるのに対し、輸入は全体の13%を占めている。日本とMENAの貿易は日本の大幅な輸入超過であり、MENAの貿易赤字額は日本全体の赤字幅の2倍強である。これは言うまでもなく日本がMENA地域から大量の石油及びガスを輸入していることにある。特にMENAの主要貿易相手国であるGCCは輸出2.8兆円に対して輸入は8.9兆円、貿易赤字が6.1兆円となっており、MENA20カ国の貿易赤字はそのままGCC6カ国の貿易赤字ということになる。
(2)GCC, MENA、中国および米国との輸出入
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/10-G01.pdf 参照)
MENA及びGCCの貿易額を中国及び米国と比較すると、中国の貿易額は33兆円、米国は23兆円である。MENAの貿易額13兆円は米国の6割、中国の4割である。しかしその内訳をみるとMENAは輸入と輸出の比率が10対4であり貿易バランスは6.2兆円の赤字である。中国も貿易赤字はGCCと同額の6.2兆円であるが、輸入と輸出の比率は10対7であり、輸出入のバランスはMENAのほうがはるかに悪い。米国の場合は輸出15.2兆円、輸入8.1兆円であり、MENAあるいは中国とは逆に7.2兆円の貿易黒字である。
(続く)
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