2016年05月24日
油価急落で中東からの輸入額が急減―MENA(中東・北アフリカ)の対日貿易(2015年版)(5)
(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0378MenaRank10.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その10)
3.2011年~2015年の日本とMENA諸国の貿易
(5年間で初めて減ったMENAの貿易額!)
(1)日本とMENA諸国の貿易額及び対中国、対米貿易との比較
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/10-T04.pdf 参照)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/10-G03.pdf 参照)
2011年から2015年までの5年間の日本とMENA19カ国1機関(パレスチナ自治政府)との貿易総額(輸出と輸入の合計額)は、2011年15兆円、2012年16兆円、2013年19兆円、2014年20兆円と毎年増加し続けたが2015年は一転して減少に転じ同年の貿易総額は13兆円と過去5年間で最も少ない。また日本の貿易総額に占める割合は2011年から2014年までは12%前後であったが、2015年は8.8%の一けた台に落ち込んでいる。米国及び中国と比較すると、MENAの貿易額は2014年まではほぼ米国に肩を並べていたが、2015年はMENAが減少した反面米国は大きく伸び、中国も微増であった。このためMENAと両国の貿易格差は拡大し、2015年はMENAは米国の2分の1、中国の3分の1にとどまっている。
(日本の対MENA貿易は5年連続で赤字!)
(2)日本/MENA間の輸出と輸入
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/10-G04.pdf参照)
MENAの貿易額を輸入と輸出に分けて見ると、日本のMENAからの輸入額は2011年の13兆円から2014年には16兆円まで膨れたが、2015年には一転して過去最低レベルの10兆円であった。一方日本からの輸出額は2.4兆円(2011年)→2.7兆円(2012年)→2.9兆円(2013年)→3.5兆円→3.7兆円と5年間を通じて増加傾向が続いている。
2011年の福島原発事故以後LNGの輸入が急増し、油価の高騰と相まってサウジアラビア、カタールなどからの輸入額が急増した。しかし2014年年央以降は油価が急落、さらに円安の影響もあって円建て輸入額は急減した。これに対してMENA産油国は2015年までオイル・ガスブームが続いており自動車・プラントなど日本からの輸出が増加している。
この結果、日本のMENA諸国に対する貿易収支は2014年まで年間10兆円以上の赤字であったが、2015年は赤字幅が6兆円に縮小している。
(続く)
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