2016年06月30日
流入・流出共に上向くMENAの直接投資:UNCTAD「世界投資レポート2016年版」(3)
(MENAなんでもランキング・シリーズ その4)
2.2010-2015年のFDI Inflows(FDI インバウンド)の推移
(漸く上向き始めたMENAへの投資!)
(1)MENA全般の動向
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/4-T02.pdf 参照)
2010年に869億ドルであったMENA地域のFDIインバウンドは2012年以降は740億ドル(2012年)→721億ドル(2013年)→629億ドル(2014年)と4年連続して減少した。2015年は672億ドルと6年前の8割の水準にとどまっているが、漸く上昇に転じる兆候が見られる。
MENAと世界全体を比較すると2010年の全世界のFDIインバウンドは1.4兆ドルに対しMENAのそれは869億ドルであり、全世界に占める比率は6.3%であった。その後全世界の投資額は2011年に1.6兆ドルと回復したにもかかわらず、MENA地域は逆に大幅に減少しておりその結果MENAの全世界に占める比率は2011年には4.6%に下がり、FDIインバウンドにおけるMENAの存在感は薄らいでいった。その後MENAのFDIインバウンドは減少し続けたが、世界全体のFDIも減少したためMENAの全世界の比率は5%前後で推移した。2015年は上に述べた通りMENAのFDIインバウンドは増加したが、世界の投資額が大幅に伸びたため、MENAの全世界に占める割合は逆に3.8%にとどまり、過去6年間では最も少ない。
2011年以降昨年までのMENAの直接投資の停滞は「アラブの春」の影響が大きいと考えられる。2011年から2013年にかけて原油価格が急騰し、GCC産油国では投資・建設ブームが発生したが、外国投資家はMENAの政情不安を嫌って投資を手控えており、またその後2014年から今年にかけて原油価格が急落したことも外国投資家の不安感を誘ったと見られ投資は低い水準のままである。昨年は5年ぶりにMENAへの外国投資が上向いており、今後この傾向が続くかどうか慎重に見守る必要があろう。
なお中国は2010年の1,150億ドルが翌年には1,240億ドルとなりその後足踏みが続いていたが、昨年は1,360億ドルであった。米国は2010年の1,980億ドル以降毎年増加と減少を繰り返し2014年には1,070億ドルまでに減少したが、昨年は一気に3倍以上に増加、過去6年で最も多い3,800億ドルを記録している。これに対して日本のFDIインバウンドは諸外国に比べ極めて低く、しかも過去6年間のうちの3回(2010年、2011年および2015年)は還流額が新規インバウンドを上回る純減状態である。また2012~14年の3年間もFDIインバウンドは20億ドル前後にとどまっている。
(続く)
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