2016年07月05日
流入・流出共に上向くMENAの直接投資:UNCTAD「世界投資レポート2016年版」(5)
(MENAなんでもランキング・シリーズ その4)
3.2015年のFDI outflows(FDIアウトバウンド)
(FDIアウトバウンドが飛び抜けて多いイスラエルとUAE!)
(1)MENA各国の対外直接投資
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/4-T03.pdf参照)
2015年のMENA各国のFDIアウトバウンド(FDI outflows)の総額は430億ドルであり、同年の全世界の合計額1兆4,700億ドルに占める割合は2.9%であった。これはFDIインバウンド(FDI Inflows、第1項参照)の世界全体に占める割合3.8%より低く、MENA地域は資本の出資者であるよりも、むしろ資本の導入国という色合いが強いことを示している。因みに日本、米国、中国の投資額はそれぞれ1,287億ドル、3,000億ドル及び1,276億ドルであり、米国一国でMENA投資額の7倍、日本、中国は3倍である。
国別では、イスラエルが97億ドルと最も多く次いでUAEが93億ドルであり、この2か国でMENA全体の44%を占めている。両国に続くのがサウジアラビア(55億ドル)、クウェイト(54億ドル)、トルコ(48億ドル)、カタール(40億ドル)である。これら6カ国でMENA全体の9割強を占めている。
第7位以下の各国は上位7カ国と大きな開きがありいずれも10億ドル未満である。各国の投資額は以下の通り。
リビア、オマーン(各8.6億ドル)、モロッコ(6.5億ドル)、レバノン(6.2億ドル)、バハレーン(5億ドル)、パレスチナ自治政府(1.9億ドル)、エジプト(1.8憶ドル)、イラク(1.5億ドル)、イラン(1,4億ドル)、アルジェリア(1億ドル)。チュニジア、イエメン、ヨルダン各国はいずれも1億ドル未満。(シリアはデータなし)
2014年と比較すると、総額では180億ドル、70%の大幅な増加である。世界全体では12%の増加であり、2015年のMENAのFDIアウトバウンドは高水準であった。その結果MENAの占める比率は2014年の1.9%から2.9%に拡大している。国別で最も大きく増加したのはクウェイト(-105億ドル→+54億ドル)である。同国の場合、前年は大幅な資金の還流があったのに対して、2015年は一気に資金流出が増加している。クウェイトに次いで増加額が大きいのはイスラエルであり、同国は2014年の37億ドルから2015年は97億ドルと3倍近い増加であった。一方、2013年よりも大幅に減少したのはカタール(67億ドル→40億ドル)である。
(続く)
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