2016年07月12日
流入・流出共に上向くMENAの直接投資:UNCTAD「世界投資レポート2016年版」(9)
(注)本シリーズは「マイライブラリ(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
(MENAなんでもランキング・シリーズ その4)
(高いFDIインバウンド残高を誇るサウジアラビア!)
5.2015年末のFDI Inward Stock(FDIインバウンド残高)
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/areha_kazuya/4-T05.pdf 参照)
2015年末のMENAのFDIインバウンド残高(FDI Inward Stock)は総額1兆750億ドルであり、世界全体の残高24兆9,800億ドルに占める比率は4.3%であった。同年中の全世界のFDIインバウンドに占める割合(3.8%)より少し高い。
残高の最も多い国はサウジアラビアの2,241億ドルであり、MENA諸国の中で唯一2千億ドルを超えている。2位はトルコで1,455億ドル、3位はUAEの1,111億ドル、4位はイスラエルの1,044億ドルであり、これら3カ国が残高1千億ドルを越えている。上位4カ国がMENA全体に占める割合は54%に達する。続く5位はエジプト(943億ドル)である。これら5カ国のうちトルコは前年度より232億ドルと大幅に減少している。またUAEも44億ドル減であるが、サウジアラビア、イスラエルおよびエジプトはいずれも60~80億ドル増加している。
6位以下10位まではレバノン(586億ドル)、モロッコ(487億ドル)、イラン(451億ドル)、カタール(332億ドル)、チュニジア(329億ドル)であり、200億ドル台にヨルダン、バハレーン、イラク、アルジェリア及びオマーンの5か国が並んでいる。リビア、クウェイト、シリア3か国は100億ドル台であり、パレスチナ自治区は25億ドル、イエメンはMENAで最も少ない7億ドルにとどまっている。
2015年の単年度FDIインバウンド(本レポート第1章参照)の順位と比較すると、単年度ではトルコ1位、イスラエル2位、UAE3位、サウジアラビア4位、エジプト5位であり、これに対して残高ではサウジアラビア1位、トルコ2位、UAE3位、イスラエル4位、エジプト5位である。双方は同じ顔ぶれでありこれら5カ国はMENAの中で外国投資家の人気が高いことがわかる。
イラクは単年度FDIインバウンドでは35億ドルでエジプトに次いで多いが、残高は266億ドルでMENA13位にとどまり、サウジアラビアの8分の1、トルコの5分の1に過ぎない。旧フセイン政権時代に経済制裁を受け、2003年のイラク戦争後も経済回復が進まず、さらに最近では「イスラム国」の台頭により国内の政情不安が収まらないなど長期間にわたり投資環境が悪化したままであり外国投資家が敬遠していることがわかる。
なお日本、米国、中国の流入残高はそれぞれ1,710億ドル、5兆6千億ドル及び1兆2千億ドルである。MENAトップのサウジアラビアに比べると、日本は同国よりやや少なく、米国は25倍、中国は5倍である。またMENA全体の投資残高(1兆750億ドル)は、中国のそれよりやや少なく、日本の6倍、米国の5分の1である。
(続く)
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