2017年01月20日
MENA(中東・北アフリカ)諸国と世界の主要国のソブリン格付け(2017年1月現在) (2)
(注)本レポート(3回)は「マイライブラリ(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0396SovereignRating2017Jan.pdf
2.1月現在の各国の格付け状況
(表:http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-G-3-01.pdf参照)
今回の格付けは半年前と比べ欧米先進国、BRICs諸国、アジア及びMENA各国とも大きな変化はなかった。
(極東4か国の中で一歩抜け出した韓国、後塵を拝する日本!)
(1)欧米先進国および極東4か国の格付け
ドイツ、スイス、カナダ、オーストラリア、シンガポールなどは引き続きトリプルAの最高格付けを維持している。同じEU諸国でもオーストリアは1ランク下のAA+で、英、仏、ベルギーはさらに1ランク低いAAにとどまっている。経済力が世界一の米国の格付けはAA+である。
極東アジアの日本、中国、韓国及び台湾のうち韓国はこれまでのAA-からAAにアップし英仏或いはカタール、クウェイト、アブダビなど中東湾岸産油国と同格である。中国と台湾は半年前のト変わらずAA-である。これら4か国に対して日本はさらに1ランク低いA+の格付けにとどまっており、イスラエル或いはアイルランドと同格である。
(アブダビ、カタールより大幅に劣るサウジアラビア!)
(2)GCC6か国を含むMENA諸国の格付け
GCC6カ国のうちクウェイト、カタールおよびアブダビ(UAEは首長国毎の格付けでありドバイは格付けされていない)は上記の通りAAである。GCC最大の経済規模を誇るサウジアラビアは昨年前半まではこれら3か国と同じランクであったが、現在はA-であり、3か国とは4ランクの差がある。原油価格の低迷で同国の財政は厳しい試練に直面しており、外貨準備高が急速に減少しただけでなく、7年ぶりに国債発行を余儀なくされている。財務改善のめどが立たないことに対し格付け機関は厳しい評価を下している。
財務状況が悪化しているのはオマーンおよびバハレーンも同様であり、オマーンは昨年1月のAランクから現在はBBB-へ4ランク落ちている。因みにBBB-は投資適格の最低ランクである。またバハレーンは昨年下期からさらに1ランク格下げされ、現在の格付けは投資不適格のBB-である。
その他のMENA諸国ではイスラエルがA+であるがこれは日本と同格である。モロッコはBBB-でかろうじて投資適格の格付けを維持している。これに対してトルコは昨年後半にBB+からBBに格下げされ投資不適格のままであり、ヨルダンはトルコよりさらに1ランク低くバハレーンと同じBB-にとどまっている。エジプト、レバノン及びイラクはこれらの国々より3ランク低いB-の格付けであり、EUのギリシャとおなじ格付けである。
(東南アジア諸国は投資適格と不適格の境目に混在!)
(2)BRICsおよびアジアの発展途上国の格付け
アジア・オセアニア地域ではオーストラリア、シンガポールおよび香港が独、スイスなど西欧諸国に並ぶ最上級AAAの格付けであり、東南アジア諸国ではタイがBBB+、フィリピンはBBB、インドがBBB-である。BBBはS&Pの格付け定義では「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」とされ投資適格の中で最も低いランクである。
そしてインドネシアはBB+でありロシアあるいはポルトガルと同じ投資不適格の格付けであり、ベトナムはBB-である。投資格付けBBの定義は「より低い格付けの発行体ほど脆弱ではないが、事業環境、財務状況、または経済状況の悪化に対して大きな不確実性、脆弱性を有しており、状況によっては債務を期日通りに履行する能力が不十分となる可能性がある」とされ、投機的要素が強いとみなされている。
BRICs諸国のうち中国は上記の通りAA-であり、インドは南アフリカと同じ投資適格では最も低いBBB-である。ロシアはBB+、ブラジルはBBで共に投資不適格の範疇とされている。
(続く)
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