2017年02月26日
油価低迷で貿易不均衡大幅に解消―MENA(中東・北アフリカ)の対日貿易(2016年版)(6完)
(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0398MenaRank10.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その10)
3.2012年~2016年の日本とMENA諸国の貿易(続き)
(表http://menarank.maeda1.jp/10-T04.pdf 参照)
(サウジ、UAE、カタールからの輸入は急減、過去5年間で最低水準!)
(3)主な国の輸入額の推移
(図http://menarank.maeda1.jp/10-G05.pdf 参照)
サウジアラビア、UAE、カタール、イランおよびイラクは石油・天然ガスの主要な輸入国であるが、これら5カ国の過去5年間の国別輸入額の推移を見ると、5年間を通じてサウジアラビアの輸入額が最も多く、その額は2012年の4.4兆円から2014年には5兆円に増加した。しかし2015年は前年比4割減の3兆円に急減、2016年はさらに前年比3割減の2兆円台ぎりぎりであった。
UAEはサウジアラビアとほぼ同様の傾向を示し、2012年の3.5兆円から2014年には4.4兆円のピークに達した後、2015年、2016年は共に前年比で34%前後の大幅な落ち込みとなり、2016年にはピーク時の2014年の4割にとどまっている。天然ガスの主要な輸入国であるカタールの場合、ピークとなった2014年(3.5兆円)から2年連続で40%強減少しており、2016年の輸入額は2014年の3分の1に落ち込んでいる。同国からの輸入減はLNG価格の下落、同国以外の輸入ソースの多様化等の影響と言えよう。
これら3カ国に対してイラクからの輸入額は3,000億円以下で低迷し、特に2013年以降は3年連続で減少、2016年の輸入額は1,200億円と2013年から半減している。イランについては2012年から2014年までの3年間は6,000億円台であったが、2015年および2016年は3,000億円台に急減している。経済制裁による輸入抑制と原油価格下落の影響が大きく表れている。
(好調な輸出に陰りがみえるサウジアラビア、UAE、底が見え始めたイラン向け輸出!)
(4)主な国への輸出額の推移
(図http://menarank.maeda1.jp/10-G06.pdf 参照)
MENAの日本からの輸出額では過去5年間を通じてUAEがトップである。これはドバイを通じた第三国への再輸出が多いからである。UAE向けの2012年の輸出は7,200億ドルであったが、その後はオイルブームにより2012年以降同国向けの輸出は4年連続で増加、2014年、15年は1兆円の大台を超えている。但し昨年は8,700億円まで減少、2013年の水準に戻った。
オイルブームは同じ湾岸産油国のサウジアラビアにも表れており、同国向け輸出は2012年の6,600億円から2015年には1.3倍の8,300億円に増加している。但し2016年は前年比で51%も減少し5,500億円にとどまり、2012年を下回る5年間では最低の水準にとどまっている。
同じ産油国であるがイラン向け輸出は対イラン経済制裁により2012年の521億円が2013年には164億円にとどまっている。その後は回復の兆しが見え、2016年には632億円と過去5年間で最も多かった。
地域の経済大国であるトルコ向け輸出は2012年以降毎年増加しており、2016年は3,107億円と5年前の2012年の1.6倍に達している。またもう一つの地域大国エジプトは過去5年間を通じて1,200億円から1,500億円の間を上下しており大きな変化は見られない。
以上
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