2017年05月31日
高い価格競争力:MENA(中東・北アフリカ)の旅行・観光産業競争力指数(2017年版)(6)
(注)本シリーズは「マイライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0411MenaRank16.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その16)
2017.5.31
前田 高行
3.MENA主要6カ国及びスイス、日本、米国の項目別比較(レーダーチャート)
(図http://menarank.maeda1.jp/16-G01.pdf 参照)
ここでは下記の3つのグループについて2017年の各国の項目別世界順位をレーダーチャートにより比較してみる。
(1) 上位グループ:スペイン、日本、UAE
(2) 中位グループ:トルコ、イスラエル、サウジアラビア
(3) 下位グループ:エジプト、チュニジア、イラン
レーダーチャートは最も外側が世界順位1位であり内側の中心は世界151位である(実際の調査対象国数は136か国)。また最上段の1から14までの記号は第二項に述べた調査項目の(1)から(14)を示している。各分野の世界順位を結ぶ輪が各国の状況である。レーダーチャートの輪が外側に広がっているほど世界での順位が高く、また輪の形が円に近いほど各分野の均衡がとれていることを示している。
(1)上位グループ:スペイン、日本、UAE
ここでは世界1位のスペインと同4位の日本、さらにMENAトップで世界29位の3か国を比較する。項目別では3か国とも5情報インフラ、10空路インフラ及び11陸上・海上インフラの3項目の世界ランクが高く、インフラ施設が整っていることが解る。また4人材・労働市場、6旅行・観光業の優先度、9環境持続性なども3か国のランクは比較的高いレベルで揃っている。
1事業環境についてはUAE(世界5位)と日本(同20位)が高いのに対してスペインは世界平均を下回る75位にとどまっている。一方14文化資産・ビジネス旅行についてはスペインが世界2位、日本は同4位に対しUAEは世界50位である。また13自然資産についてもスペイン世界9位、日本世界26位に対してUAEは極めて低い91位にとどまっている。しかし8価格競争力は日本とスペインが共に世界90位台に対して、UAEは56位である。UAEは砂漠に囲まれ歴史も新しいため文化・自然遺産に乏しいが、価格面では経済先進国のスペイン、日本に勝っていると言える。
各国別に見ると、スペインはインフラ、サービスが高く、自然・文化資産など見るべきものが多く、これらの分野で世界のトップレベルにある。また安全、衛生、情報インフラ等もかなり整備されているが、価格競争力と事業環境の両面では世界レベルに達していないようである。
日本の場合は交通インフラ、文化資産・ビジネス旅行、市場開放度などが世界のトップレベルと評価され衛生、人材、情報、サービス等も世界20位前後と評価されている。しかし価格競争力だけが世界94位と極めて低い評価である。日本の旅行・観光産業の競争力は価格を除けば比較的均整が取れている。
UAEは1.ビジネス環境、2.安全・治安、10.航空路インフラの3分野では世界のトップ・テンに評価されており、その他の分野も多くは世界20位~30位台である。UAEの世界順位が低い分野は3衛生(世界63位)、7.市場開放度(同75位)、13.自然資産(同91位)などである。
(2) 中位グループ:トルコ、イスラエル、サウジアラビア)
トルコ、イスラエル、サウジアラビアの世界ランクはそれぞれ44位、61位及び63位であり、世界の中では中の上に位置する。この3か国は各分野の多くで順位が近接しているが、それぞれの国の特質を現すランクの差が大きいものもいくつか見られる。
6旅行観光業の優先度は3か国とも70~80位であり大きな差はなく、13自然資産も同様の傾向である。しかし8価格競争力は3か国間にかなり大きな開きがあり、サウジアラビアの世界17位に対してトルコは70位、イスラエルは133位である。空路インフラ、陸上・海上インフラ、旅行者サービスなどは3か国ともおしなべて世界ランクは上位であり各国の旅行・観光機関の意欲がうかがえる。一方9環境持続度はイスラエルが世界91位、トルコ112位、サウジアラビア124位であり3か国とも評価が低い。
(3)下位グループ:エジプト、チュニジア、イラン
総合世界順位はエジプト74位、チュニジア87位、イラン93位といずれも世界の下位グループに属している。これら3か国は14項目のほとんどで世界の平均以下であり、イランなどは100位以下が6項目にも及ぶ。
このような中で3か国とも世界的な競争力を示しているのが8価格競争力の項目であり、イランは世界1位、エジプトが同2位、チュニジアも同9位といずれも世界のトップテンに入っているのが特徴である。そして14文化資産・ビジネス旅行の項目ではエジプトとイランが世界の上位クラスである。両国は共に紀元前にさかのぼる文明を有し、欧米諸国にはない遺産を保有している。しかし4人材・労働市場の面では3か国とも世界ランクは100位以下である。また5情報インフラ、10空路インフラ11陸上・海上インフラなど各種インフラの整備が遅れており遺産を生かし切れていないようである。
(続く)
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