2017年06月29日
停滞気味のMENAの直接投資:UNCTAD「世界投資レポート2017年版」(2)
(注)本シリーズは「マイライブラリ(前田高行論稿集」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0418MenaRank4.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その4)
2017.6.29
前田 高行
1. FDI インバウンド(FDI Inflows, 直接投資流入額)
(全世界に占めるMENAの比率はわずか3.1%、米国の8分の1!)
(1)2016年のFDI インバウンド(FDI Inflows, 直接投資流入額)
(表http://menarank.maeda1.jp/4-T01.pdf 参照)
2016年のMENA各国のFDIインバウンドの総額は538億ドルであり、前年に比べ7%減となった。これは米国(3,911億ドル)の8分の1、中国(1,337億ドル)の4割の規模である。なお日本は114億ドルであった。因みにMENAのFDIインバウンドは全世界の合計額1兆7,500億ドルの3.1%を占めている。
国別ではイスラエルが123億ドルで最も多く、これに次ぐのはトルコの120億ドルであり、この2カ国だけが100億ドルを超えている。第3位はUAEの90億ドル、4位のエジプトは81億ドル、5位のサウジアラビアは75億ドルで以上5か国が投資流入額50億ドル以上である。このうちトルコは前年(173億ドル)より大幅に減少している。一方エジプトは前年より12億ドル増加しており対照的な結果を示している。
6位以下はイラン(34億ドル)、レバノン(26億ドル)、モロッコ(23億ドル)、ヨルダン(15億ドル)と続き、10位のチュニジアから、カタール、リビア、バハレーン、クウェイト、パレスチナ自治政府及び16位のオマーンまでは1桁台である。なおイエメンは-6億ドル、アルジェリアは-15億ドル、イラク-59億ドルであるが、これはそれぞれの国からの外資の引き揚げ額が新規流入額を上回っていることを意味している。特に政情不安のイラクは2013年以降4年連続でマイナスであり外資の引き揚げが止まらない状況にある。なおシリアは既に述べた通りFDIインバウンド、アウトバウンドいずれも金額が公表されていない。
MENA全体では前年に比べ7%減少したが、世界全体でも昨年比2,800億ドル、1.6%減少している。世界的に直接投資が低調であったがMENAの落ち込みが大きかったようである。その中で米国のFDIインバウンドは3,911億ドルで全世界の2割強を占めており、また前年比では12%強増加しており、世界のマネーが米国に向かっている様子がうかがわれる。
(続く)
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