2017年07月24日
停滞気味のMENAの直接投資:UNCTAD「世界投資レポート2017年版」(8)
(注)本シリーズは「マイライブラリ(前田高行論稿集」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0418MenaRank4.pdf
(MENAなんでもランキング・シリーズ その4)
2017.7.24
前田 高行
(2) 2011-2016年の対外投資額(FDIアウトバウンド)の推移(続き)
(増減の波が大きいクウェイトとカタール、着実に増加しているサウジとUAE!)
(b)GCC6カ国の対外直接投資(FDIアウトバウンド)の推移
(図http://menarank.maeda1.jp/4-G03.pdf 参照)
GCC6カ国の2011年から2016年までの対外投資(FDIアウトバウンド)を各国別に比較すると、2011年の対外投資額はクウェイトの108億ドルが最も大きくカタールとならんで100億ドルを超えている。その他の5カ国はサウジアラビア34億ドル、UAE22億ドル、オマーン12でバハレーンはマイナス9億ドルであった。
2012年にはクウェイトとカタールの両国は大幅に減少、その他の4カ国は微増あるいは微減であったため、6か国の差は縮小した。2013年にはクウェイトが再びトップとなったがその後は2014年マイナス105億ドル→2015年プラス54億ドル→2016年マイナス63億ドルと激しい増減を繰り返している。クウェイトの投資家が対外投資にかなり敏感で神経質に反応しているのではないかと推測される。これに対してUAEは2012年以降毎年着実に増加し2015年には167億ドルと5年間で7.2倍に拡大、2016年は若干落ち込んだがGCC6カ国の中では飛び抜けて高い対外投資水準を示している。
サウジアラビアのFDIアウトバウンドもUAEほどではないものの毎年着実に増えており、2011年の34億ドルから2016年にはGCC2位の84億ドルに達している。カタールは2011年の101億ドルをピークに増減を繰り返しているが、増減の幅はクウェイトほど大きくなく、2016年は79億ドルであった。同国は天然ガスの輸出が好調であり、政府系ファンド(SWF)による欧米の企業或いは銀行に対する出資・買収が盛んである。クウェイトとカタールは石油・天然ガスの価格高騰により国内に余剰資金が溢れているにも関わらず自国の経済規模が小さいため国内での投資機会が乏しく、国内資本が海外に向かっているのである。
オマーンとバハレーンは過去6年間を通じて大きな変化は見られず投資規模はほぼ10億ドル未満にとどまっている。両国はサウジアラビア、UAEなど他の4か国に比べ石油・天然ガスの産出量が少なく余剰資金が少ないことがFDIアウトバンドの少ない理由である。
GCC各国の海外投資動向は余剰オイルマネーの額に比例し、国内経済の規模に反比例すると考えられる。つまり石油・天然ガスの生産量が多い国は多額の余剰マネーが発生しその投資先を国内外に求める。その場合人口が多く国内経済規模が大きなサウジアラビアでは国内での投資機会が多く資金は国内に向かうが、人口が少ない割にオイルマネーが豊富なUAE、クウェイト及びカタール各国は余剰資金が海外に向かう傾向がある。
(続く)
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