2018年01月23日
格付け格差広がるGCC6カ国:MENAと世界主要国のソブリン格付け(2018年1月現在) (3)
(注)本レポートは「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0433SovereignRating2018Jan.pdf
2018.1.23
前田 高行
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
2.1月現在の各国の格付け状況 (続き)
(表:http://menadabase.maeda1.jp/1-G-3-01.pdf 参照)
(B+に格下げされたバハレーン、トップのクウェイト、アブダビとは11ランクの格差!)
(3) GCC6か国を含むMENA諸国の格付け
GCC6カ国のうちクウェイトおよびアブダビ(UAEは首長国単位の格付けでありドバイは格付けされていない)はAAである。カタールは昨年6月迄はクウェイト、アブダビと同じ格付けAAであったが6月5日にサウジアラビア、UAEなどが同国と断交し、陸路・海路が封鎖されたため経済の見通しが不安視され、格付けは1ランク下がりAA-になっている。これは台湾と同じで、中国、日本よりは1ランク上である。
GCC最大の経済規模を誇るサウジアラビアは一昨年前半まではこれら3か国と同じランク(AA)であったが、現在はA-であり、UAE、クウェイトとは4ランク、カタールとは3ランクの差がある。原油価格の低迷で同国の財政は厳しい試練に直面しており、外貨準備高が急速に減少しただけでなく、7年ぶりに国債発行を余儀なくされている。財務改善のめどが立たないことに対し格付け機関は厳しい評価を下している。
同じGCC加盟国の中で財務状況が悪化しているオマーンは一昨年下半期に投資適格で最も低いBBB-にランクが落ち、さらに昨年上半期には投機的(あるいは投資不適格)のBB+になり、1年の間に大きく格付けを下げている。またGCC6か国の中で非産油国のバハレーンは経済が脆弱であり、また政治的にも不安定要因を抱えているためもともと他の5か国より格付けが低く、昨年下半期にBB-からB+に格下げされている。GCCで最上位のクウェイト、アブダビとバハレーンの格差は11ランクの開きがある。因みにS&Pの定義では格付けBは「現時点では債務を履行する能力を有しているが、「BB」に格付けされた発行体よりも脆弱である。事業環境、財務状況、または経済状況が悪化した場合には債務を履行する能力や意思が損なわれ易い。」とされている。
その他のMENA諸国ではイスラエルがA+であるがこれは日本、中国と同格である。モロッコはBBB-でかろうじて投資適格の格付けを維持している。これに対してトルコは投資不適格のBBであり、ヨルダン、バハレーンはB+である。。エジプト、レバノン及びイラクはこれらの国々よりさらに低いB-の格付けであり、EUのギリシャと同じ格付けである。
(東南アジア諸国は投資適格と不適格の境目に混在!)
(4) BRICsおよびアジアの発展途上国の格付け
アジア・オセアニア地域ではオーストラリア及びシンガポールが独、スイスなど西欧諸国に並ぶ最上級AAAの格付けであり、東南アジア諸国ではタイがBBB+、フィリピンはBBB、インド及びインドネシアがBBB-である。BBBはS&Pの格付け定義では「債務を履行する能力は適切であるが、事業環境や経済状況の悪化によって債務履行能力が低下する可能性がより高い」とされ、投資適格の中で最も低いランクである。なおインドネシアは昨年上半期に投資適格のBBB-にアップしている。
インドネシアとは逆に南アフリカは昨年上半期に投資不適格のBB+に格下げされ、ロシアと同じ格付けになっている。BRICsの一角であるブラジルは南アフリカ、ロシアより1ランク低いBBであり、これはトルコと同じ格付けである。東南アジアの新興工業国ベトナムはBB-である。
(続く)