2018年01月24日
格付け格差広がるGCC6カ国:MENAと世界主要国のソブリン格付け(2018年1月現在) (4)
(注)本レポートは「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」で一括してご覧いただけます。
http://mylibrary.maeda1.jp/0433SovereignRating2018Jan.pdf
2018.1.24
前田 高行
E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp
3.2015年1月以降の格付け推移
ここでは2015年1月以降現在までの欧米・アジア主要国及びGCC6か国のソブリン格付けの推移を検証する。
(2015年上期から2016年上期の間に格下げが続出)
(1) 欧米・アジア主要国の格付け推移
(図http://menadabase.maeda1.jp/2-G-3-01.pdf参照)
2015年1月以降のドイツ、米国、英国、中国、日本、インド、ロシア、ブラジル、ギリシャ9か国の格付けの推移は以下の通りである。
ドイツは過去3年間常に最高のトリプルAの格付けを維持している。英国は2015年末まではドイツと並びトリプルAの格付けを受けていたが、2016年前半に一挙に2段階下がり、現在はAAである。同国は一昨年6月の国民投票によるEU離脱決定が懸念され、ソブリン格付けの引き下げにつながった。米国は財政赤字が悪化したことなどにより数年前から格付けはトリプルAより1ランク下のAA+を続けている。現在の英国のソブリン格付けAAは米国よりも低い。
ドイツ、米国、英国を最上級の格付け国とすれば、中国及び日本はこれに次ぐ格付けランクを保っている。両国は2015年上期までは共に最上級(AAA)から3ランク下のAA-の格付けであった。しかし2015年下期に日本はさらに1ランク下のA+に格下げされ、従来通りのAA-を維持した中国が日本を上回っていたが、昨年下期に中国が下方修正されたため現在は共にA+である。
新興経済国BRICsを構成しているブラジル、ロシア、インド及び中国のうち、中国を除く3カ国は2015年1月時点では共に投資適格では最も低いランクのBBB-であった。しかし2015年上期にロシアが1ランク下がり投資不適格のBB+に下がった。その後、ブラジルの経済が急激に悪化、同国の格付けは2015年下期、2016年上期と連続して格下げされ、現在の格付けは3カ国の中で最も低いBBである。
なお欧州金融危機の引き金となったギリシャの格付けの推移を見ると、2015年1月時点でBであったが、財政悪化が表面化して同年上期には一挙にCCC-に格下げされた。S&Pの定義では格付けCCCは「債務者は現時点で脆弱であり、その債務の履行は、良好な事業環境、財務状況、および経済状況に依存している。」であり、ギリシャは破綻の一歩手前にあるとみなされていた。その後同国の状況は改善、2016年上期にB-に戻り現在に至っている。
(続く)
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