2018年06月27日
UNCTAD「世界投資レポート2018年版」(2)
(MENAなんでもランキング・シリーズ その4)
2018.6.27
前田 高行
1. FDI インバウンド(FDI Inflows, 直接投資流入額)
(前年の5分の1に激減したサウジアラビア!)
(1)2017年のFDI インバウンド(FDI Inflows, 直接投資流入額)
(表http://menarank.maeda1.jp/4-T01.pdf 参照)
2017年のMENA各国のFDIインバウンドの総額は616億ドルであり、前年に比べ4%増であった。これは米国(2,754億ドル)の5分の1、中国(1,363億ドル)の半分弱の規模である。なお日本は104億ドルであった。因みにMENAのFDIインバウンドは全世界の合計額1兆4,300億ドルの4.3%を占めている。
国別ではイスラエルが190億ドルで最も多く、これに次ぐのはトルコの109億ドル、UAEの104億ドルであり、この3カ国だけが100億ドルを超えている。第4位のエジプトは74億ドル、5位のイランは50億ドルで以上5か国が投資流入額50億ドル以上である。2位のトルコは前年(129億ドル)より大きく減少しており、一方1位のイスラエルは前年から3割以上増加し両国の順位が入れ替わった。
6位以下はモロッコ(27億ドル)、レバノン(26億ドル)、オマーン(19億ドル)、ヨルダン(17億ドル)、サウジアラビア(14億ドル)と続いている。このうちサウジアラビアは前年の75億ドルに比べ5分のⅠに急減している。同国は皇太子の主導によりビジョン2030を掲げて外国資本の導入による産業構造の変革を柱の一つとしているが、UNCTADの統計に見る限り目標と実態が大きくかけ離れているように見受けられる。
サウジアラビアに続くのはアルジェリア(12億ドル)であるが、11位のカタール以下チュニジア、バハレーン、クウェイト及びパレスチナ自治政府は直接投資流入額が10億ドル未満である。なおイエメンは-3億ドル、イラク-50億ドルであるが、これはそれぞれの国からの外資の引き揚げ額が新規流入額を上回っていることを意味している。特に政情不安のイラクは2013年以降5年連続でマイナスであり外資の引き揚げが止まらない状況にある。なおリビアとシリアは既に述べた通りいずれも金額が公表されていない。
世界全体では昨年比4,400億ドル、23%減少しており世界的に直接投資が低調であったことを示しているが、MENAは前年比23億ドル(4%)増加しており、MENAへの外国資本の流入が活発であったことを示している。これは既述のごとくイスラエルの増加が顕著であったことが最大の理由である。
(続く)
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