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2006年03月19日
サウジアラビアを巡る英仏の戦闘機売り込み競争
昨年初からサウジアラビアの新鋭戦闘機商談を巡る英国とフランスの激しいつばぜり合いが報道され、サウジ国防当局はその都度否定していた(4/18 & 10/3 Arab News)。そして12月末、サウジアラビアと英国による戦闘機Typhoon購のMoU締結が報じられた(12/22 Arab News)。サウジアラビアがこれまで使用してきた英国Tornade戦闘機の後継として、Typhoonを最低48機、オプションとして最大72機購入すると言う大型商談である。
これに対し今月始めにシラク大統領は外相、国防相のほか20人のトップ・ビジネスマンを引き連れてサウジアラビアに乗り込んだ。国防相を同行したのは英国の商談を覆すことが目的であったろうことは想像に難くない。マスコミは仏製Rafale戦闘機48機+同数のオプション及びMiksa国境電子警備システム、総額84億ドルの超大型商談であると報じた。しかし大統領直々の訪問も空振りに終わったようである。
今月末には英国のチャールズ皇太子とカミーラ妃がサウジアラビアを訪問すると発表されている。王族の訪問が生臭い商談に直接関係がある訳ではない。チャールズ皇太子はサウド王家と親しく、再三招待を受けてサウジアラビアを訪問している。しかし皇太子の訪問がビジネスと全く無関係とは言えない。これまでも皇太子のサウジ訪問の前後に、何らかの大きなビジネスの成約が報じられており、その中には軍事的なものも含まれていたからである。
サウジアラビアは油価高騰で大幅な貿易黒字となり、今年度予算の歳入は3,900億SR(1,040億US$)と過去最大規模である。軍事予算については後追いではあるが、毎年度末に公表されるSAMA(サウジ通貨庁)の年次報告で明らかにされる。これによれば昨年の場合は950億SR(約250億US$)である。また過去4年間、軍事費はほぼ一定して予算総額の3分の1を占めていることから類推すると、今年の軍事予算は1,300億SR(350億US$)と推定される。この巨額の軍事予算を目当てに英仏など武器輸出国のサウジ詣ではひきも切らない。
UAE、アルジェリアでも大型商談
サウジアラビア以外でも産油国の豊かなオイルマネーを狙った武器売り込みが盛んに行われているようだ。UAEでは今年5月に米国製戦闘機F-16の引渡しが始まった。80機のF-16及び乗員の訓練などを含め総額86億ドルである(5/4 Khaleej Times)。韓国までもがUAEに練習機の売り込みを図っているようである(昨年3/2 Khaleej Times)。
つい最近では今月11日にロシアのプーチン大統領がアルジェリアを訪問した。プーチン大統領は滞在中にMig29戦闘機40機を含む総額75億ドルの武器売買契約に調印した。契約内容はMig戦闘機40機のほか、スホイ戦闘機20機、ロケットシステム8機、タンク40台などである。ロシア側は同国の製品は西欧製に比べて品質に差は無く、価格が15~20%安い、と述べている。今回の取引の特異な点は、ロシアがアルジェリアに対して保有していた47.4億ドルの負債を帳消しにするというものである(3/11 Arab News)。借金棒引きのかたに武器を売り込むロシア商法には驚かされる。プーチン大統領とブーフテリカ・アルジェリア大統領の会談は予定の1時間を大幅に上回り5時間であった、とロシアのNTVは伝えている。
(次回は「軍備内容の質的変化―大型兵器から小型火器・ハイテク装置へ」)
昨年初からサウジアラビアの新鋭戦闘機商談を巡る英国とフランスの激しいつばぜり合いが報道され、サウジ国防当局はその都度否定していた(4/18 & 10/3 Arab News)。そして12月末、サウジアラビアと英国による戦闘機Typhoon購のMoU締結が報じられた(12/22 Arab News)。サウジアラビアがこれまで使用してきた英国Tornade戦闘機の後継として、Typhoonを最低48機、オプションとして最大72機購入すると言う大型商談である。
これに対し今月始めにシラク大統領は外相、国防相のほか20人のトップ・ビジネスマンを引き連れてサウジアラビアに乗り込んだ。国防相を同行したのは英国の商談を覆すことが目的であったろうことは想像に難くない。マスコミは仏製Rafale戦闘機48機+同数のオプション及びMiksa国境電子警備システム、総額84億ドルの超大型商談であると報じた。しかし大統領直々の訪問も空振りに終わったようである。
今月末には英国のチャールズ皇太子とカミーラ妃がサウジアラビアを訪問すると発表されている。王族の訪問が生臭い商談に直接関係がある訳ではない。チャールズ皇太子はサウド王家と親しく、再三招待を受けてサウジアラビアを訪問している。しかし皇太子の訪問がビジネスと全く無関係とは言えない。これまでも皇太子のサウジ訪問の前後に、何らかの大きなビジネスの成約が報じられており、その中には軍事的なものも含まれていたからである。
サウジアラビアは油価高騰で大幅な貿易黒字となり、今年度予算の歳入は3,900億SR(1,040億US$)と過去最大規模である。軍事予算については後追いではあるが、毎年度末に公表されるSAMA(サウジ通貨庁)の年次報告で明らかにされる。これによれば昨年の場合は950億SR(約250億US$)である。また過去4年間、軍事費はほぼ一定して予算総額の3分の1を占めていることから類推すると、今年の軍事予算は1,300億SR(350億US$)と推定される。この巨額の軍事予算を目当てに英仏など武器輸出国のサウジ詣ではひきも切らない。
UAE、アルジェリアでも大型商談
サウジアラビア以外でも産油国の豊かなオイルマネーを狙った武器売り込みが盛んに行われているようだ。UAEでは今年5月に米国製戦闘機F-16の引渡しが始まった。80機のF-16及び乗員の訓練などを含め総額86億ドルである(5/4 Khaleej Times)。韓国までもがUAEに練習機の売り込みを図っているようである(昨年3/2 Khaleej Times)。
つい最近では今月11日にロシアのプーチン大統領がアルジェリアを訪問した。プーチン大統領は滞在中にMig29戦闘機40機を含む総額75億ドルの武器売買契約に調印した。契約内容はMig戦闘機40機のほか、スホイ戦闘機20機、ロケットシステム8機、タンク40台などである。ロシア側は同国の製品は西欧製に比べて品質に差は無く、価格が15~20%安い、と述べている。今回の取引の特異な点は、ロシアがアルジェリアに対して保有していた47.4億ドルの負債を帳消しにするというものである(3/11 Arab News)。借金棒引きのかたに武器を売り込むロシア商法には驚かされる。プーチン大統領とブーフテリカ・アルジェリア大統領の会談は予定の1時間を大幅に上回り5時間であった、とロシアのNTVは伝えている。
(次回は「軍備内容の質的変化―大型兵器から小型火器・ハイテク装置へ」)
at 22:27